環境対策をめぐる「極端すぎる」株主提案 企業はどう対応する? CFO Dive

異常気象の発生や災害の激甚化が続く中、企業の環境対策への株主の関心は上昇している。「気候変動対策を強化すべき」という株主提案がある一方でそれに反対する株主提案もあり、賛成派・反対派ともに提案内容は先鋭化している。「極端すぎる」提案に企業はどう対処しているのか。

» 2023年09月14日 13時10分 公開
[Jim TysonCFO Dive]

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 気候変動問題への関心が高まる中、米国における議論が両極化している。人工妊娠中絶や移民問題などと同様に、「気候変動対策を強化すべきだ」という意見とそれとは真逆の意見は交わることなく、それぞれ先鋭化が進んでいる。

 気候変動問題をめぐるこうした状況は政治の場にとどまらず、企業にも「極端すぎる株主提案」という形で影響を及ぼしている。企業はどう対応しているのか。

「極端すぎる」株主提案 企業はどう対応する?

 株主やガバナンスに関するデータを提供するDiligent Market Intelligenceによると、ESG(環境、社会、ガバナンス)のパフォーマンス向上を目的とした株主からの提案件数は2023年第2四半期に過去最多となった。中でも、気候変動に焦点を当てた提案が比較的高い承認率を獲得した。

 Diligent Market Intelligenceによると、2023年6月30日現在、環境に焦点を当てた株主提案は83件(2022年通年では69件)、社会問題に関する株主提案は199件(2022年通年と同数)となっている。

 一方で、環境に関する株主提案の承認率は2022年の34.2%から21.7%に低下した(注1)。社会問題に関する株主提案の承認率は、2022年が24.5%だったのに対し、2023年6月30日時点では17.7%にとどまった。

 Diligent Market Intelligenceのジョシュ・ブラック編集長は、「2023年は、ESG基準強化に対する賛成派と反対派の両極端な意見を反映した株主提案が増加した。提案への支持率が比較的低かったため、全体的な承認率も低下した。また、2023年は投票前に企業が提案を受け入れる傾向が高い」と、電子メールで述べた。

 また、同氏はESGに関する提案の承認率が低下した理由について、「ESG賛成派・反対派を問わず、提出される提案がより極端になっているのが平均支持率が伸びない理由だ。一方で、容認できる提案や高い支持を得る可能性のある提案の撤回に合意する企業が増えている」と指摘した。

 2022年、米国証券取引委員会(SEC)では上場企業に対して、従業員構成や気候変動への取り組みなどのESGへの取り組み状況に関する詳細な報告書の公表を義務付けるべきかどうかを巡って議論が激化した。

 ブラック氏によれば、この論争によって、企業の持続可能性への取り組みについて多くの情報を求める株主の圧力は弱まることはなかった。「こうした騒動があっても、企業が環境や社会に与える影響や方針に関するより良いデータにアクセスしたいという機関投資家の欲求は一貫している」(ブラック氏)

 SECは、気候変動リスクに対応するための戦略を年次報告書に記載することを義務付ける最終規則を2023年中に発表する可能性をにおわせている。そこには、企業が気候変動リスクを低減するために設定した目標を達成するための計画も含まれる。

 この最終規則によると、企業は、自社が排出する温室効果ガス(GHG)の量(Scope1排出量)、またはエネルギー企業から自社が購入した電力やガスを消費することで発生するGHG排出量(Scope2排出量)のデータを開示する必要がある。そのデータは第三者機関によって(正確さを)証明されなければならない。

 同規則案には1万5000通超のコメントが寄せられた。その中には「(SECには)サプライチェーンに携わるサプライヤーやベンダーが排出するデータ(Scope3排出量)の開示を企業に求める計画がある」としてSECを非難するコメントもあった。

 Diligent Market Intelligenceによると、役員報酬に焦点を当てた提案のうち、2023年6月30日時点で投票されたのは46件と、2023年通年の38件を上回った。提案への平均支持率は2022年の35%から26%に低下した。

 「企業の男女間賃金格差に関する報告の強化や株式ベースのインセンティブの長期保有目標の設定、クローバック(報酬返還)ポリシーの強化に対する株主の支持は高い。一方で、役員退職金に関する提案が大幅に増加している。2023年には3つの提案が50%以上の支持を得たが、他の多くの提案はより低い支持しか得られなかった」(ブラック氏)

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