オムニチャネルのお手本? 「1年間で100万人の顧客を獲得」した実践例を紹介Retail Dive

コロナ禍を機に、小売業界ではオムニチャネルの取り組みが拡大している。これまでIT活用のイメージが薄かったペット業界も例外ではないようだ。他業界との提携やアプリの刷新で顧客を増やした企業の実践例を紹介する。

» 2023年09月29日 17時50分 公開
[Tatiana Walk-MorrisRetail Dive]

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Retail Dive

 これまでペット業界はITと深いつながりがあるようには見られてこなかったが、コロナ禍を経て状況は変わったようだ。

100万人の顧客を獲得した「他の誰にもできない方法」とは?

 他業界との連携やアプリの刷新によって、単なるEコマースの展開にとどまらず、顧客ニーズを起点としたサービス提供への転換を図る企業がある。1年間で100万人の顧客を獲得した同社の施策を紹介しよう。

 2023年8月17日(現地時間)、成長を続ける米国のペット小売業者Petco Health and Wellness Company(以下、Petco)は、デリバリー事業者のDoorDashとの提携を拡大し、オンデマンドで商品を提供することを発表した(注1)。フードやおやつ、ベッド、ボウル、おもちゃ、その他の用品を含む1万以上の商品をEコマースの「DoorDash Marketplace」で提供する。

 Petcoはアプリも刷新した。買い物客は自身のペットに必要な栄養や予防接種、グルーミング予約のリマインダーなどの情報を「ペットのプロフィール機能」で一元的に保存できる。

 同社のプレスリリースによると、PetcoはFinTech企業であるKlarna Bank ABが提供する、無金利で4分割払いが可能な「Pay in 4」支払いオプションをモバイルアプリに搭載した。Klarnaの分割払いオプションは、2021年8月以来、全米の1500以上の店舗とKlarnaアプリで利用できるようになっている。

実店舗も急拡大 吉と出るか凶と出るか?

 PetcoがKlarnaとDoorDashとの提携を拡大するのは、店舗とオンラインで顧客に多くのサービスを提供する取り組みの一環だ。

 Petcoは、Staples(注2)、Sephora(注3)、Walgreens(注4)、Victoria's Secret and Party Cityなど(注5)、DoorDashのサービスを利用する大手小売業者のリストに加わりつつある。

 Petcoのダレン・マクドナルド氏(CCO《最高顧客責任者》)は「DoorDashとの提携拡大により、Petcoのヘルス&ウェルネス商品の品ぞろえは充実した。全米でより多くの飼い主が利用できるようになった」と声明で述べた。

 「Petcoアプリの新たな機能強化と相まって、私たちはペットと飼い主の固有のニーズに、他の誰にもできない方法で応え続けている」(マクドナルド氏)

 モバイルアプリの機能強化に加え、Petcoは保険プランを提供することでペットの健康管理を強化している。2022年10月27日には英国の金融機関Nationwide Building Societyと提携し(注6)、薬局や動物病院、診療所、その他の健康プログラムをカバーする保険をペットの飼い主に提供し始めた。

 一方、同社は実店舗販売も拡大している。2023年7月1日にはニューヨーク市の公園であるユニオンスクエアに2万5000平方フィートのフラッグシップペットケアセンターをオープンした(注7)。同店舗では、新しく迎えられたペットとその飼い主のためのフォトブースや屋内ドッグトレーニングパーク、グルーミングサロン、動物病院などのサービスを提供している。同社はまた、リフォーム・家電チェーンのLowe’s内のショップを15店舗から約300店舗に拡大すると発表した(注8)。

 顧客増加を受けて、Petcoは店舗とオンラインサービスを拡大している。2023年第1四半期の純収入は5.4%増の15.6億ドル、既存店売上高は前年同期比5.1%増だった(注9)。前年同期の2470万ドルの純利益に対し190万ドルの純損失を計上したが、「2022年は100万人の新規顧客を獲得した」と2023年に発表した(注10)。

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