一方、組織・人・文化の変革については、データドリブン経営ではCxOや幹部だけでなく、一般社員まで全社目線で最新のデータを日々の活動に活用することが必要だ。NECは2021年度、社長直下に社内DXの専門組織である「トランスフォーメーションオフィス」を新設した。この組織では全領域におけるTo-Be目線での再構築を推進している。
具体的には、ダッシュボードの日々の活動への活用などだ。さらに、幹部に向けた意識改革セッション、各部門の変革推進者への技術研修、一般従業員への基礎トレーニングなど、さまざまな施策についてターゲットを明確にして実施している(図4)。
こうした実践を通して得たDXを成功に導くための要点として、森田氏は次の2つを挙げた。
こうしたQuick Winで継続する事例として、森田氏は先に紹介したダッシュボードの活用について次のように説明した。
NECでは、従業員が社内で活用できるダッシュボードを現時点で67個公開しており、月間利用回数は12万回に及ぶ(図5)。
ダッシュボードの具体的な事例では、プロセス変革につながるものとして商談管理プロセスのモニタリングがある。商談プロセスの標準化後、プロセスマイニングを実施し、現状を可視化することで、オペレーションの改善を進めている。ダッシュボードの情報を基にクイックなアクションにつなげることで、収益性向上を図ることができる(図6)。
NECは生成AI(人工知能)の活用にしても環境を整備している。全従業員が安全かつ安心して利用できる生成AI環境を2週間でリリースした。常時2万人以上が利用できる仕組みをワンパッケージ化し、アジャイルに機能強化を進めていく。「生成AIを全社で使いこなし、圧倒的な生産性向上につなげたい」(森田氏)とのことだ(図7)。
改めて、森田氏が説くDXを成功に導くための要点に注目すると、長期ビジョンを描くこととQuick Winで継続することはセットで取り組むべきだろう。長期ビジョンがあってこそ、Quick Winでの継続を企業変革に生かせる。すなわち、プランとアクションだ。シンプルだが、企業のDXの取り組みにおける課題を端的に言い表しているのではないだろうか。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
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