NEC社長が自社事例から語る「DXを成功に導く2つのポイント」Weekly Memo(1/2 ページ)

企業のDXを成功に導くための要点とは何か。NEC社長が説く社内事例から解き明かす。

» 2023年10月02日 16時00分 公開
[松岡功ITmedia]

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 今や多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるが、思惑通りに事が運ばないケースも少なくないようだ。DXを成功に導くための要点とは何か。企業のDXを支援しているNECが、自社イベントで披露した社内のDX事例から成功の要点に言及した。今回はその内容を取り上げたい。

DXは「企業変革」への取り組み

 NECが2023年9月20〜22日にオンライン開催した「NEC Visionary Week 2023」の初日の基調講演で、同社社長兼CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏が社内DX事例を披露した。

NEC社長兼CEOの森田隆之氏

 以下、森田氏の説明に基づいて、社内DX事例の内容を紹介する。

 NECのDXは、2020年に「NEC自身をDXの実験場とするプロジェクト」を立ち上げたことから本格的な取り組みが始まった。社内DXの目指すところは「データドリブン経営」の実現だ。

 振り返ると、NECは各事業部門が独立して事業を行い、業務プロセスもITシステムも分断されていた。しかし、2000年代に入り、グローバルな会計制度の要請から、オンプレミスではあったものの、グループ全体として最初のDXに着手した。

 当時はITシステムの統廃合を中心とした変革として、約1400あったシステムを750まで削減し、一定の効果が得られた。しかし、異なる事業を跨(またが)るプロセスの標準化まではなかなか踏み込めず、一部のITシステムの標準化にとどまり、バージョンの違いやアドオンのような非効率なシステムが残っていた。

 今は事業ポートフォリオの変革を経て、あらためてNECは全社的なデータドリブン経営を目指し、ITシステムにとどまらないプロセスやデータの標準化を進めている(図1)。

図1 データドリブン経営に向けた社内DXの変遷(出典:「NEC Visionary Week 2023」基調講演)

 データドリブン経営の実現は、「IT・制度・プロセス・データの変革」にとどまらず、「組織・人・文化の変革」でもある。従って、企業活動の全ての領域にメスを入れ、To-Be目線で再構築すること、いわば「コーポレートトランスフォーメーション」(企業変革)という捉え方が必要だ(図2)。

図2 「コーポレートトランスフォーメーション」(企業変革)の取り組み(出典:「NEC Visionary Week 2023」基調講演)

 実際の取り組みについて見ていくと、まず、ITや制度、プロセス、データの変革については、プロセスやデータの標準化を統一するためには業務システムのモダナイゼーションが必須だ。NECの場合は、まず基幹システムの「SAP S/4HANA」化、およびクラウド化を進めた。今はこれを完了し、周辺システムのクラウド化と、次世代デジタル基盤のための基幹システムの刷新に取り組んでいる。

 以前のシステムはアドオンを繰り返し、データ整備も不十分で、従業員は多くのシステムを使い分ける必要があった。次世代の基幹システムのポイントは、コアとサイドバイサイドだ。コアの部分のプロセスの標準化についてはSAP S/4HANAによって行い、NECの差別化領域はサイドバイサイドという形でコアから適度に独立させることにより、標準化と柔軟性を両立させたITシステムを実現している。

 それと並行して、プロセスとデータの標準化も進めている。これまではプロセスとデータが部門ごとにバラバラで、全社のデータ集計や素早い状況把握が困難だった。そこで、全社の戦略から営業活動、業務管理までのプロセスを標準化した。同時に商品品目や公正価格といった重要項目を見直し、マスターを整備した。これにより、データがプロセスの上流から横断的に収集できるようになった。標準化されたデータは全社共通のデータプラットフォームに蓄積される。これにより、全社のデータを常に分析し活用できるようになった。

 このデータを全従業員に対して、ダッシュボード上で「見える化」した。ダッシュボードは各CxOがオーナーとなり、マーケティング、ファイナンス、サプライチェーンのそれぞれの領域に生成されており、経営層と社員が同じデータを見ながら、事業を遂行することが可能になった(図3)。

図3 ダッシュボードの運用体制(出典:「NEC Visionary Week 2023」基調講演)
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