「半導体余り」はもう終わり? フォルクスワーゲンが調達戦略を刷新Supply Chain Dive

半導体不足後に訪れた「半導体余り」の記憶が新しい中、フォルクスワーゲンが半導体をメーカーから直接調達する方針を決定した理由とは。また、大手自動車メーカーが確保に走る「半導体以外」の重要な材料は何か。

» 2023年10月04日 12時30分 公開
[Ben UnglesbeeSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 コロナ禍で深刻な半導体不足に陥った後、需要が落ち込み、「半導体余り」と呼べるような状況が一時的に訪れたことは記憶に新しい。しかし今になって、大手自動車メーカーのVolkswagenグループが半導体を確実に調達できるよう、戦略を刷新したという。一体、半導体は余っているのか、それとも足りていないのか。Volkswagenグループが従来の仕組みを刷新してまで半導体を重視する理由は何だろうか。

「半導体余り」はもう終わり?

 Volkswagenグループは2023年8月第4週、半導体と電子部品の調達戦略を見直し、メーカーからの直接購入に移行すると発表した(注1)。

 これまで自動車メーカーはコントロールユニットのような「電子部品」を調達していたが、その部品を何に使用するかはTier1(一次請け)サプライヤーがほぼ自由に決定していた。今後、VolkswagenグループはTier1サプライヤーとの緊密な協力とパートナーシップの下で、どの半導体やその他の電子部品うを使うべきかというグループの調達方法を見直すという。

 Volkswagenは、「Porsche」「Audi」「Volkswagen」を含む各ブランドの調達部門と開発部門、部品部門とソフトウェア部門の代表から構成される半導体調達委員会を設立する。

 パンデミック時代の半導体不足は自動車業界を震撼(しんかん)させるとともに、調達とサプライチェーン戦略に内在するリスクに注目が集まるようになり、調達戦略の重要性が高まった。Volkswagenは「半導体不足によって2022年の納車台数は7%減った」と2023年初めに発表していた(注2)。

 世界的な需要過多の状況が落ち着き、半導体メーカーの生産力を向上したことで半導体不足は緩和されたものの、Volkswagenは将来的に半導体の生産が追い付かなくなる可能性を懸念している。

 同社はインハウスにグループ横断の半導体調達委員会を設置することで、「ボトルネックが発生した場合、技術的な代替案をより迅速に特定して実施できる」と、同社の「Škoda」ブランドの調達リーダーで、社内供給セキュリティ・タスクフォースの責任者であるカルステン・シュネーク氏は述べた。

 Volkswagenは発表の中で、半導体を「自動車産業において不可欠なもの」とし、「大量生産のための基盤であるだけでなく、イノベーションの推進力であり、新製品を市場に投入するための鍵でもある」と付け加えた。

 同社は「多くの自動車メーカーが電気自動車(EV)の生産を拡大するにつれて、半導体は自動車産業にとってさらに重要なものとなり需要も高まるだろう」と指摘した。

 自動車メーカーが不足に備えているのは半導体だけではない。大手自動車メーカーは近年、EVの製造に必要な材料の将来的な供給を確保する動きを見せている。Fordはインドネシアのニッケルサプライヤーに投資し(注3)、GM(ゼネラルモーターズ)は硫酸マンガンの新工場に資金を提供して3万2500トンの鉱物を確保した(注4)。

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