テレワーク求人の減少は“オトナの事情”? 再検討されるオフィス勤務の価値CFO Dive

米国での調査によると、技術職の求人広告に占めるテレワークの割合は、パンデミック後にピークを迎えた2022年8月の24%から、2023年5月には18.6%に減少した。

» 2023年10月12日 07時00分 公開
[Maura Webber SadoviCFO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CFO Dive

 不動産サービス会社Jones Lang LaSalle(JLL)の調査部門と、数千の求人サイトをモニターしている就労分析会社Lightcastのデータによると、テック企業は2023年に入ってからフルリモートでの求人掲載を大幅に減らしており、テレワーク求人の割合は、パンデミック後のピークであった2022年8月の24%から2023年5月には18.6%にまで減少している。

 パンデミックが始まったころは、技術職とそれ以外の出社が必要な企業の求人広告はよく似た傾向を示しており、求人広告に掲載された職務の5%弱がフルリモートであった。しかし技術職がテレワークにより積極的になるにつれてその傾向は変化し、出社が必要な他の職種のテレワーク求人広告は、2022年10月に12.4%でピークを迎えた。これは技術職のテレワーク求人割合のピーク時の約半分の数値であり、データによると2023年5月には9.7%にまで減少したという。

ハイブリッドワークが広がる中、企業がテレワーク求人を出さないワケ

 多くの企業が週に2〜3日オフィスに出社するハイブリッドワークモデルに移行している中、テレワークの求人掲載数が減少していることは、雇用主の方が高い交渉力を有することを示唆している。JLLの総合ポートフォリオサービスのマネージングディレクターであるケイティ・レドモンド氏は、「CFO Dive」からの質問に対して「企業がテレワークの求人広告を出した場合、その条件をほごにすることは難しい。そのため出社での勤務をデフォルトにすることで企業は柔軟に対応できるようにしている」と電子メールで述べている。

 オフィスを利用する業界全体でテレワークが減少しているのは、多くの財務担当幹部がテレワークの時代における適切なオフィスサイズと不動産コストの在り方に頭を悩ませているためだ(注1)。またそれらの企業の一部は、パンデミックの初期にテレワーク導入に最も積極的だった企業であることも注目すべき点である。

 技術職とオフィスを使用する全職種との間の差異は現在解消されつつある。企業が協力体制やチームビルディング、対面での新人研修の価値を見いだすにつれて、個人で働くことの多い技術職であっても、少なからずオフィスでの勤務に戻っていくと、レドモンド氏は予測している。

 この変化はここ数カ月のテック業界の低迷も反映している。パンデミック初期には好調だったシリコンバレー中の大企業や中小企業がレイオフに見舞われているからだ。

 レドモンド氏によれば、技術職の採用は困難で需要が高く、またこれらの職務に就いている人々はリモートツールを使用する技術に精通していたため、リモート従業員の採用や雇用は容易であったという。加えて多くのテレワーク求人は個人で取り組む職務であり、自己完結的に遂行できる仕事と考えられていたと同氏は話す。しかしテレワークが続くにつれて、企業は生産性や入社時の課題に気付いたという。

 「テレワークがなくなることはないだろう。オフィス内での勤務にシフトしている企業では、テレワークについて交渉でき、ほとんどの企業では柔軟なハイブリッドワークモデルをポリシーとしている。しかしこれはCFO(最高財務責任者)やCEOがオフィスでの時間も重要視していることを示している」と同氏は書いている。

 オフィス内勤務の要件を厳格化し、波紋を広げている大手テック企業の中にAmazon.comがある。同社のCEOであるアンディ・ジャシー氏は2023年2月、同年5月1日(現地時間)から従業員を少なくとも週3日はオフィスに戻す計画を説明した。

 「オフィスに一緒にいて同僚に囲まれている時間が長いほど、企業文化を学び、模範としながら実践し、強化しやすくなる」と彼は同社のWebサイトに投稿している(注2)。

 しかしテック企業でなくとも全ての企業が同じ方針というわけではない。総合情報サービスのBloombergの報告によると(注3)、Harley-DavidsonのCEOであるヨッヘン・ツァイツ氏は、バーチャル会議は職場を民主化すると述べている。そして2022年、Harley-Davidsonは、ウィスコンシン州ミルウォーキーにある約4万6000平方メートルの本社ビルを再活用し、テレワークを導入する計画を発表した。

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ