企業が抱える未使用のクラウド契約額は3000億ドルCIO Dive

Infosysのマネージングパートナーであるクリス・リー・クリル氏は報告書の中で「クラウドは予算のブラックホールになり得る」と述べている。

» 2023年10月16日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 ITコンサルティングサービスのInfosysの最新の報告書によると、企業のクラウド契約の半数以上は未使用であり、その額は3000億ドル以上に上るという(注1)。同社は、現在契約されているサービスの金額とSEC(米国証券取引委員会)によるクラウド事業者の収益申告を比較した。

クラウド移行においてコスト削減よりも求めるものとは?

 この余剰金はクラウドに対する企業の期待を満たしていない。同社が調査した2500人以上のグローバルビジネスリーダーのうち3分の2が「2023年のクラウドへの支出を増やした」と回答している。さらに回答者の5人中4人は2024年も支出を増やす予定だ。

 これまで同様、レガシーシステムのリプレースやアップデートがクラウド導入のきっかけとなっており、企業は現在、コストによる制約を受けにくくなっている。報告書ではクラウド移行によるコスト削減よりも、成長と変革の方が3倍重要であることが明らかになった。

 テクノロジーが成熟するにつれ、優先順位は変化する。

 ベンダーは通常、クラウドのインフラやサービスを指定された期間内に利用できるように分割して販売する。顧客はその都度支払いを実施するが、契約条件の履行は約束されている。Infosysが詳述しているように、クラウド事業者は確約された支払い額と利用額との間に差額が生じるため、支払いが実行された時点で売上を報告する。

 企業のクラウド移行が始まってからの最初の10年で得た重要な教訓は、より強力でスケーラブルなコンピュートへのアクセスが利用を増加させるということである。インスタンス当たりのコストは低下するかもしれないが、全体的な支出は増加する。

 Infosysのマネージングパートナー兼グローバル・コンサルティング・クラウド・リーダーであるクリス・リー・クリル氏は報告書で「クラウドは予算のブラックホールになり得る」と述べている。

 同報告書によると、クラウドへの投資は増加しているにもかかわらず、企業はその移行結果におおむね満足しているという。

 また、ハイブリッドエコシステムはマルチベンダー戦略に置き換わっている。

 回答者の3分の2が、3社または4社のクラウド事業者と契約しており、マルチクラウド戦略を取る企業の割合は2021年と比較して75%増加している。Infosysによると、これらの企業のほとんどは、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google Cloudの3大ハイパースケーラー全てと提携している。

 クラウドに対する需要の高まりでマルチクラウドがさらに加速し、企業はそれぞれのユースケースに適したクラウドを適切な価格で探し求めるようになっている。「1社のみのクラウド事業者と取引している」という回答者の割合は、2年前の5社中1社強から、10社中1社以下に減少した(注2)。

 企業が単一のクラウドにコミットするケースは減少傾向にあり、当初の計画から外れることも珍しくない、と報告書は指摘する。

 「企業が特定のクラウドを全面的に採用する戦略的な理由や好みを示していたとしても、特定の部門ではやむを得ず既存のクラウドを使い続けるか、他の事業者が提供するサービスやソリューションを選択する理由を見つけるだろう」(クリル氏)

 導入の管理やデータストリームの解放、コストをビジネスに結び付けることが、CIO(最高情報責任者)に迫る課題として浮上している(注3)。回答者の3分の1以上がサイロ化された展開に苦慮していると報告し、40%が自社組織のクラウドガバナンスが弱いことを認めている。

 非営利法人のFinOps Foundationによって概説された監視手法は、クラウド費用の合理化のための実践的なロードマップを提供し、監視、最適化、そして最終的なコスト予測のプロセスを通じて組織を導く、と報告書は述べている(注4)。

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