MicrosoftとIDCによる調査によって、AIに対する投資が実際にどのぐらいの利益を生んでいるのかが明らかになった。AIの活用に取り組んでいる企業がつまづきがちな課題とは。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
企業がAI(人工知能)活用に取り組む中で、成果をたたき出す企業がある一方で、そうではない企業もある。AIへの投資はどのぐらいの利益を生んでいるのか。AIを活用したい企業を悩ませる「導入時の課題」とは。
Microsoftが調査会社IDCに委託して世界16カ国の企業2109社を対象に実施した調査によってAIへの投資がどのぐらいのリターン(利益)を生んでいるかが明らかになった。同調査の結果は2023年11月に発表された(注1)。
同調査によると、企業はAIへの投資から平均14カ月以内にリターン(利益)を回収しており、AIに1ドル投資するごとに平均3.5ドルのリターンを得ている。
Microsoftのインダストリー部門および「Microsoft Azure」クラウドプラットフォーム部門のアリッサ・テイラー氏(コーポレートバイスプレジデント)は、「今回の調査結果は、AIがもたらすビジネス価値が実証可能だと示している。従業員体験(EX)や顧客エンゲージメント、社内のビジネスプロセスといった分野における中核的なユースケースにおいて、イノベーションを進展させるのにAIが役立つことを明らかにした」とブログ投稿で述べた(注2)。
McKinsey & Companyが2023年8月に発表したグローバル調査の結果によると、Microsoftが支援するOpenAIが開発した生成AI「ChatGPT」の登場から1年足らずで、企業の3分の1が1つ以上のビジネスシーンで生成AIを定期的に使用している(注3)。
回答した経営幹部の4分の1近くが「生成AIツールを個人的に業務で使用している」と回答し、回答者の4分の1以上が「生成AIは既に取締役会の議題に挙がっている」と明らかにした。
回答者の40%は「企業全体としてAI投資を増やす予定だ」と回答した。
McKinsey & Companyは調査報告書で「生成AIは地域や業界、役職を問わずビジネスパーソンの関心を集めている。仕事やそれ以外でも活用されている」と指摘した。
McKinsey & Companyが2023年9月に発表した記事によると、現在から2030年にかけて、生成AIはほぼ全ての職種においてビジネス活動の約70%を自動化し、世界経済に数兆ドルの価値をもたらす可能性がある(注4)。
一方でIDCの調査報告書によると、AIの活用に前向きであるにもかかわらず、導入に際して課題に直面する企業もある。回答者の52%が「業務全体にわたってAIの実装と拡張を実現できるスキルの高い従業員の不足」を導入における最大の阻害要因として認識している。
AIの活用がなかなか進まない状況はDX(デジタルトランスフォーメーション)が浸透しない様子と似ている。コンサルティングを手掛けるKPMGが2023年9月に発表した調査結果によると、企業幹部の51%が「過去24カ月間、DXへの投資によって業績や収益性はほぼ向上しなかった」と回答した(注5)。
DXプロジェクトの妨げになるものとして、回答者の47%は「ガバナンスと調整の欠如」を挙げた。他に多くの回答を集めたのは「社内のスキル不足」(41%)、「変化への対応が遅くなるリスク回避の文化」(40%)、「レガシー技術による制約」(39%)、「サイバーセキュリティやプライバシーの問題」(37%)だった。
(注1)The Business Opportunity of AI(Microsoft)
(注2)New study validates the business value and opportunity of AI(Microsoft)
(注3)The state of AI in 2023: Generative AI’s breakout year(McKinsey & Company)
(注4)The organization of the future: Enabled by gen AI, driven by people(McKinsey & Company)
(注5)Half of digital transformation investments fail: KPMG(CFO Dive)
(初出)Microsoft-backed study shows AI investments producing returns
© Industry Dive. All rights reserved.