生成AIが従業員にもたらす「恩恵」とは? ガートナーの予測を紹介CIO Dive

生成AIが企業や従業員にもたらすのはどのような「未来」か。企業が支払うコストやわれわれのキャリアアップにはどのような影響が出るのか。ガートナーが発表した10の予測から特に重要な3点を紹介する。

» 2023年11月24日 11時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 調査会社であるGartnerが発表した2024年のITを巡る予測は、そのほとんどがAI(人工知能)に焦点を当てており、急速に発展するテクノロジーの先に何が待ち受けているかを予感させるものとなった(注1)。

 生成AIは新しいツールやサービスの波をもたらしたが、同時に未知のリスクや課題ももたらした。

 2023年10月17日に開催された「Gartner IT Symposium/Xpo 2023」(開催地:フロリダ州オーランド)で、Gartnerのリー・マクマレン氏(バイスプレジデントアナリスト)は「誇張ではなく、20〜25年後に2023年を振り返ったとき、『全てを変えた年だった』と言うことになるだろう」と語った。

 今後数年間で、過去のテクノロジーや仕組みによって構築されたレガシーシステムのモダナイゼーションを生成AIが進め、地政学的バランスの変化や知的労働者の組合結成の動機付けをもたらすだろうと多くのCIO(最高情報責任者)は予想している。

 生成AIのワークロード(処理にかかる負荷)をサポートするためには堅固なデータアーキテクチャとITインフラを必要とする。生成AIを採用すれば、企業は他の領域における変革への取り組みを迅速に進めることができるだろう。

生成AIは「従業員自身」に恩恵をもたらす

 Gartnerのトップ10リストから抜粋した、AIの未来に関する3つの予測を見てみよう。

1. 2027年までに、生成AIツールは従来のビジネスアプリケーションの分析や適切な代替システムの構築に使用され、モダナイゼーションコストを70%削減する

 しかし、企業のリーダーたちは、コスト削減効果をまだ期待すべきではない。

 生成AIは無料にはならない。生成AI「ChatGPT」を訓練するには膨大なエネルギー量が必要で、これには多額の電気料金が発生する(編注)。

 マクマレン氏によれば、企業は省エネルギーやその他のコスト削減戦略に目を向けることで、新たな競争上の優位性を見いだすことができる。

2. 2027年までに、「AIの生産性」は国力を示す主要な経済指標として認識されるようになる

 生成AIが広く普及すれば、地政学的な変化をもたらす可能性がある。「オーストラリアのような小国が台頭してAI超大国になるだろう」(マクマレン氏)

 OpenAIやAnthropicのような大手AI企業が存在する米国では、日本の国会に当たる連邦議会や上下下院の小委員会で開かれる公聴会において、国の現在の立場やイノベーションが規制された場合に起こり得ることについて議論されている(注2)(注3)。規制当局は、地政学的バランスに注意を払っていることを明らかにしている。

 こうしたかじ取りは、従業員に生成AIツールの利用価値を実感させる一方で、ガイドラインや利用規定が守られるようにしている経営陣の綱渡りと似ている。

 「今日、そして将来的に生成AIに関して下す決断を真剣に受け止めてほしい。私たちはそのような決定を下すことができる、文字通り最後の世代のマネジャーなのだ」

3. 2026年には、労働者の30%がデジタルカリスマフィルターを活用し、これまで達成できなかったキャリアアップを実現する

 従業員は、人と人との関わり方に焦点を当てたソーシャルダイナミクスにおいても、AIを活用するメリットを理解し始めている。

 話者の視線が常に「カメラ目線」になっているようにAIで補正するNVIDIAの「Eye Contact」のような機能やサービスは、特定の従業員に対する雇用者の認識を向上させることができる(注4)。

 マクマレン氏は「人類史上初めて、個々の労働者に利益をもたらす技術革新が起こっている。確かにこれまでもテクノロジーは多くの雑務を省いてくれた。しかし、それによって利益を得るのは一般的に企業自身だった」と述べる。

(編注)原文では “The amount of energy that it took to train ChatGPT is just about a gigawatt, which is about the amount of electricity that 1,000 U.S. households use in a day.”(「ChatGPT」を訓練するのに必要なエネルギー量はちょうど約1ギガワットで、これは米国の家庭1000世帯が1日に使用する電力量に匹敵する)とあった。しかし、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米国の一般家庭における1世帯当たりの月間電力消費量は907キロワット時(2022年実績)であり、これを基に1000世帯の1日当たりの電力消費量を求めると3万233キロワット時となるため、「ChatGPTを訓練するのに必要なエネルギー量(1ギガワット時=100万キロワット時)は米国の一般家庭1000世帯が1日に使用する電力量に匹敵する」とするのは難しいことから、本文の記述とした。なお、全体を通じてエネルギー消費量に言及しているため、出力を示す原文の「ギガワット」「キロワット」ではなく「ギガワット時」「キロワット時」としている。

(注1)Gartner Unveils Top Predictions for IT Organizations and Users in 2024 and Beyond(Gartner)
(注2)Schumer calls for ‘new process’ to regulate AI, urging speed in Congress(CIO Dive)
(注3)OpenAI CEO asks Congress for AI regulation and a new agency(CIO Dive)
(注4)NVIDIA Broadcast 1.4 Adds Eye Contact and Vignette Effects With Virtual Background Enhancements(NVIDIA)

(初出)3 Gartner predictions that showcase the future of enterprise AI

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