「Streamlit in Snowflake」でデータドリブン組織はどう変わるか

Snowflakeにデータエンジニアがその場でデータ可視化可能な環境が正式に加わった。データドリブンの障壁解消なるか。

» 2023年12月20日 08時42分 公開
[原田美穂ITmedia]

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アマンダ・ケリー氏

 Snowflakeは2023年12月19日、来日したStreamlit Co-Founder兼COOで現在Snowflakeに所属するアマンダ・ケリー氏が会見を開いた。

 Streamlitは、2018年に創業したスタートアップで、Python用のUIライブラリ「Streamlit」をオープンソースで公開している。ケリー氏によればStreamlitは既に「約4000万ダウンロードと広くPythonユーザーに利用されている」。このStreamlitを2022年に買収したのがクラウドデータプラットフォームを提供するSnowflakeだ。

 2023年11月末にはStreamlitと「Snowflake」が一緒になったプロダクト「Streamlit in Snowflake」をGAとしてリリースしている。データの安全性やガバナンス、安全な共有といったエンタープライズ向けのデータ管理機能は引き続きSnowflakeが担う。これにデータドリブンな意思決定のための可視化をアジャイルに進めるためのツールが組み込まれた形だ。

Streamlit in Snowflakeの機能概要(出典:スノーフレイク提供資料)

 Snowflakeの日本法人であるスノーフレイクのセールスエンジニアリング統括本部長である井口和弘氏は「すでに日本のSnowflakeユーザーの大半がStreamlitユーザーでもあった」と説明する。買収の情報は国内ユーザーからも高い関心が寄せられており、今回のケリー氏の来日は同社イベント開催をきっかけに国内ユーザーとの情報交換の機会を設ける目的もある。

いままで困難だった「データエンジニアがその場でアプリ開発」を実現する

 Streamlit開発のきっかけについてケリー氏は、データ活用の現場において、何らかの可視化アプリケーションを開発する際、ビジネスサイドのニーズとデータエンジニア、フロントエンド開発者との間に障壁があることを指摘する。

Streamlit in Snowflakeによってデータ活用のプロセスを変革(出典:スノーフレイク提供資料)

 「自分たちのテクノロジーに合わせたデータを準備するには自分で作らなければならない部分が多い。だがこの作業にはデータ整理、データ可視化、データを理解できる場所に置くといった作業が発生する。アプリケーションを作成してもらい、品質やセキュリティチェックを経て、ようやくデプロイに至る。とても時間がかかる工程だ」

 これらの障壁のため、ビジネスサイドからさまざまな問い合わせがあったとしてもアウトプットできるものは限られてしまう。ビジネスサイドからすると、いくら問い合わせてもアウトプットが期待通りにえられないという経験が重なれば、問い合わせをすることそのものを「無駄」と認識してしまいかねない。そうなれば、実務の現場から上げられる貴重な問いやインサイトの量を制限してしまうことにもつながる。

 「この問題の唯一の解決方法は、私たちが実際にアプリケーションまで作ることだ。Pythonが分かればフロントエンドの開発者がいなくてもアプリケーションを構築できる。Streamlitはこの問題を解消する目的で開発された」とケリー氏は説明する。

 「2019年にStreamlitをOSSライブラリとしてリリースした。こんなに普及するとは思わなかったが、皆が同じ問題を抱えていたのだと感じる。アプリケーションを迅速に開発できるからだ。そこからの2年間は改善に務め、2022年にSnowflakeからアプローチを受けた」(ケリー氏)

 ビジネスニーズに従って進化できるのがこのツールの特徴だ。ライブラリはOSSで公開されており、利用企業が作成した成果を公開、共有できる。事業ドメインごとの特殊なニーズのものであっても、コミュニティ参加企業が公開しているものがあれば自社に取り込んで利用できる。既に一般的なデータ可視化向けライブラリの他、分子構造などの特定用途向けのライブラリが登録されている。

 「すでにFortune50の80%が採用している。DL数は4000万を超える。公開共有されたアプリケーションは先月だけで500万人が利用している。必要とされるコマンドをライブラリに含めていく計画だ。これらを利用することで、すぐにそれを呼び出してデータを可視化できる。開発はOSSコミュニティも参加しており、参加企業らが作成したコンポーネントも数千存在する」(ケリー氏)

 直近の機能拡張としては、公開されているアプリケーションギャラリーに対するセマンティック検索機能を開発中だ。「LLMに関してはユーザーの関心が高く、毎月数万のアプリケーションが作られている。Microsoft CoPilotのような生成AIとのインテグレーションでもStreamlit in Snowflakeは効果的に利用できるだろう」(ケリー氏)。

国内ユーザーのトレーニングプログラム拡充でデータ活用の裾野拡大を狙う

 プロフェッショナルサービス&トレーニング本部長の並木知己氏によれば、スノーフレイクは、国内企業における利用促進を狙い、トレーニングプログラム「Snowflake Univercity」を充実させる計画だ。

トレーニングプログラム「Snowflake Univercity」の学習ステップイメージ(出典:スノーフレイク提供資料)

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