Python in Excelの悪用は不可避 Trellixが2024年の脅威予測を公開セキュリティニュースアラート

トレリックスは2024年の脅威予測を発表した。生成AIやLLMを悪用したサイバー攻撃や新たなランサムウェア攻撃の手法が紹介されている。

» 2023年12月22日 08時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 Trellix(トレリックス)は2023年12月20日、2024年に組織が留意すべきサイバーセキュリティの流行や戦術、脅威に関する予測を発表した。

トレリックスは2024年に組織が留意すべきサイバーセキュリティの流行や戦術、脅威に関する予測を発表した。(出典:TrellixのWebサイト)

Python in Excelの悪用は不可避 2024年の脅威予測

 同社の脅威インテリジェンス機関Trellix Advanced Research Centerのサイバーセキュリティ専門家や脅威研究者らが、生成AI(人工知能)や大規模言語モデル(LLM)を悪用したサイバー攻撃や新たなランサムウェア攻撃の手法などを取り上げている。

 報じられた主な内容は以下の通りだ。

  • サイバー攻撃者が大規模攻撃にLLMを悪用する可能性がある。「GPT-4」や「Claude」「PaLM2」などの主要なLLMは自然言語タスクにおいて優れた能力を発揮しており、サイバー攻撃者にとって強力かつ費用効果の高いツールになっている。「FraudGPT」や「WormGPT」のような攻撃者向けの生成AIツールがフィッシングメールや偽のWebサイトの共同開発、検知されにくいマルウェアの開発などに使われている
  • 悪意あるコードを書いたりディープフェイク動画を作成したりソーシャルエンジニアリングを支援したりする制限のない生成AIにサイバー攻撃者がアクセスできるようになるのは時間の問題となっている。これによって未熟なサイバー攻撃者は洗練された大規模攻撃を実行できる一方で、このような状況は防御者にとって攻撃の根本原因の分析をより困難にする
  • ランサムウェア攻撃による恐喝において、データ漏えいや暗号化の対象となったユーザーに直接身代金を要求する新たな方法が加わる。これによって、ランサムウェアグループは個人情報だけでなく、ユーザーの恐喝に使用できる機密情報を取り扱っているヘルスケアやソーシャルメディア、教育、SaaS業界などの組織を標的にする
  • コネクテッドデバイスの普及やハイブリッドワーク・テレワークが続き、インサイダー脅威が増加の一途をたどる。インサイダー脅威はこの2年間で47%増加し、これらのセキュリティインシデントの対策に1538万ドルの損失が発生している
  • QRコードを使ったフィッシングキャンペーンが増加する。サイバー攻撃者は新しい手口を模索しており、QRコードが攻撃ベクトルとして魅力的なツールになっている。人々はQRコードが信頼できるものだと考えており、QRコードをスキャンすることに抵抗がない。この信頼感がサイバー攻撃者に悪用される
  • AIが生成した音声を使った詐欺が増加しており、この傾向は2024年も続く。AIが生成する音声はソーシャルエンジニアリング詐欺において重要な役割を果たしている。フィッシングやビッシング(ボイスフィッシング)は増加傾向にあり、AIが生成した音声が悪用される
  • マネージドファイル転送(MFT)ソリューションを狙うサイバー攻撃が増加する。MFTは企業間で機密データをやりとりするために設計されており、機密データの宝庫になっている。また、システムが複雑で内部ビジネスネットワークに統合されている場合、サイバー攻撃者によって都合が良い脆弱(ぜいじゃく)性が発生することがあり、サプライチェーン侵害に発展しやすい。2024年には多数のサイバー攻撃者が参加することが予測される
  • 「Go」や「Nim」「Rust」といったプログラミング言語で開発したマルウェアが増加する。これらは現在主流のプログラミング言語と比較して包括的な分析ツールが不足しており、マルウェアの解析と対策を講じるセキュリティ専門家にとって課題になる
  • ゲートウェイやルーター、VPNといったエッジデバイスにおける未知の脆弱性が悪用される。エッジデバイスは持続的標的型攻撃(APT)グループにとって新しい攻撃領域になっている。この領域には侵入検知の困難さやソリューション不足などの課題がある
  • 「Python in Excel」が新たな攻撃ベクトルになる。Microsoftがデフォルトでインターネットマクロをブロックするという防御策を「Microsoft Excel」に実装したことでサイバー攻撃者によるマクロの使用が減少した。サイバー攻撃者は代替手段を探しており、Python in Excelの活用が模索されることは確実だといえる
  • 脆弱なドライバを悪用したサイバー攻撃が増加する。これを使ったサイバー攻撃は成功する可能性やアクセシビリティーが高い。こうした攻撃はさらに増加して広範囲に影響を及ぼす

 Trellixの予測はサイバー攻撃がさまざまな領域で活発な状況を続けることを説明しており、2024年も引き続き積極的なセキュリティ対策の必要性が示されている。

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