生成AIにブームを持っていかれた? 実はWeb3の今後も楽しみなワケWeb3って「結局どないやねん」(2/2 ページ)

» 2023年12月26日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]
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保険に社債に日本酒に…広がる面白いユースケース

――印象的なユースケースではどのようなものがありますか?

金城氏: 印象的なユースケースでは、公募自己募集型の無担保セキュリティトークン社債を発行した丸井グループの事例があります。本来、社債は証券会社を通して発行しますが、丸井グループはセキュリティトークンを顧客にダイレクトに提供しています。従来は「誰が社債を購入したのか」が分かりませんでしたが、ブロックチェーンを使えばウォレットベースで購入者を判断できます。実際に丸井グループはセキュリティトークン社債購入者に対してポイントを付与し、エンゲージメント強化に取り組んでいます。

――こういう風に企業から評価されるとうれしいですね。

唐澤氏: 企業の社債や株を持っていると、その企業に対する消費が上がるとされています。丸井グループのケースでは、応援投資の抽選申込後、エポスカード利用額が前年同期比で1.3倍に増えました。海外などでは2倍というケースもあります。顧客とダイレクトにつながって、エンゲージメントを高められるのがWeb3の特徴です。顧客の立場で、企業から評価されてそれがポイントなどの形で還元されたらその企業を応援したくなりますよね。

金城氏: 現在、日本政府は法整備を進めており、今後このようなユースケースは増えると予測しています。企業とユーザーの距離感がどんどん縮まりますね。

 他の事例で言うと、米国のLemonadeという会社は「Lemonade Crypto Climate Coalition」というDAOを立ち上げ、保険の民主化、無人化に取り組んでいます。このDAOは、アフリカの小規模農家向けに、ブロックチェーンを活用したパラメトリック保険(台風の風速や地震の強度など設定した指標が一定値に達すると保険金が支払われる)を提供しています。暗号資産投資家は資金をDAOに提供し、もし気候イベントが起きれば自動的に農家はステーブルコイン、あるいは現地通貨で保険金を受け取れます。仮に事故が起きなければ、投資家は農家が支払っている保険料の一部を受け取ります。衛星データとスマートコントラクトで自動支払いを実現しており、迅速に支払いを受けられるので発展途上国などを中心に広がっています。

青山氏: 今後発表される予定の面白い取り組みの一つに「SAKE3」があります。これはNFTを購入することで、日本酒タンクの分散所有権を得るというものです。NFT保有者は、これから造られる日本酒の味やスペック(米、酵母、麹など)を決める議論に参加できます。また、限定ロットで自身が所有しているNFTやアートを日本酒のラベルにできます。通常は非公開の酒造見学や限定試飲会などの各種優待もありますね。

――“酒好きWeb3有識者”には最高な取り組みですね。

唐澤氏: 時に、企業のNFTコラボなどに対して「こんなものに何の価値があるんだ」「なぜ企業はこんな取り組みをするんだ」という声を聞きます。これは、少し考え方を変えてみると分かりますが、仮に「1万人のインフルエンサーや協力なファンに直接アプローチできる」と思ったらどうですか。ただ満遍なく広告を出すよりも、資金と興味を持つ層にアプローチした方が効果的ですよね。これがNFTが作り出すコミュニティーの強みです。

青山氏: あるブランドは、自社の顧客が高齢化していることを受け、特定の若年層とNFTプロジェクトでコラボし、顧客の若返りを行いました。

――効率的に顧客獲得やエンゲージメント強化を行えるわけですね。

唐澤氏: 事業者に大きなメリットとしては「価値を分けられる」ということもあります。売買が行われると、その商品を発送しなければなりませんが、NFTなどであれば、最悪商品そのものは動かさず、権利のみ付与すれば済みます。売買が激しいカードやアート商品などではこのような動きが出てきています。NFTなどを先に販売すれば、在庫リスクなども減らせるでしょう。

――着実にユースケースが増えていますね。最後に企業に向けてメッセージをお願いします。

唐澤氏: 「Web3で何ができるか」ではなく、「自社がどんな課題を抱えているのか、それを解決する技術は何なのか」という発想で考えましょう。こういう風に考えると、Web3や生成AI、メタバースなどを組み合わせるといった柔軟な考えが出ると思います。

金城氏: Web3はデジタル化の延長にあります。物質が情報化され、価値を持っています。それを生かすには、企業がどのような課題を解決したいのかを明確にすべきです。日本政府は規制の策定などに取り組んでおり、世界で見てもWeb3環境は整いつつあります。日本初のユースケースが出てくるようなフェーズになってます。企業は「Web3を勉強する」というよりも「まずは小さくやってみる」というスタンスが重要です。

青山氏: NFTやステーブルコインなど、多くの企業が取り組みを推進しています。これまでの一時的な“バズり”のような盛り上がりではなく、長期的な盛り上がりを期待しています。

左から金城氏と青山氏

――本日はありがとうございました。

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