EUは、新しいデジタルIDウォレットを通じて顧客に決済サービスを提供する予定だ。これが承認されれば、AppleやGoogleなどの大手テック企業は大きな痛手となるかもしれない。
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欧州連合(EU)は2023年11月8日(現地時間)、欧州議会とEU理事会がデジタルIDウォレットを決済やその他金融サービス、デジタル文書の保存に使用することを認める規制に関して最終合意に達したと発表した(注1)。
欧州委員会は発表の中で「ウォレットの特徴などにより、全ての民間サービスプロバイダーがサービスにウォレットを取り入れることに積極的になっており、これは新たなビジネスチャンスになる。ウォレットは、サービスプロバイダーがさまざまな規制要件に準拠することも容易にする」としている。
欧州議会とEU理事会が話を進めているデジタルIDウォレットは、EU内の全市民の利用を視野に入れており、これはAmazonやApple、Googleといった企業が提供する既存のデジタルウォレットや決済アプリの大きな競合となる(注2)。
これらの企業は自社のプラットフォームへのサインイン方法として、政府IDに接続されたウォレットを受け入れる必要がある。というのも、大手テック企業の既存のサインイン方法は安全性と信頼性が十分ではないからだ。欧州委員会の広報担当者はメールで「政府IDへのリンクだけが、実在の人物がアカウントに接続しているという信頼性を提供できる」と指摘する。
新しいウォレットには政府発行のIDに加え、運転免許証や処方箋、旅行券などのデジタル文書も保管される。ヨーロッパ議会とEU理事会の正式な承認を受け、EUの全市民にウォレットが提供される予定だ。承認されてから2年後には利用可能になるという。
欧州議会はEU理事会と共同でEU法に関する決定を下す。欧州委員会はEU各国から選出された27人の委員で構成され、議会によって選出される委員長と共に行政府として機能する。
Amazon、Apple、Google、Metaの広報担当者は、EUの新たな取り組みが彼らのウォレットや決済アプリにどのような影響を与えるかについて、質問に回答していない。
(注1)Commission welcomes final agreement on EU Digital Identity Wallet(European Commission)
(注2)Digital Services Act: Commission designates first set of Very Large Online Platforms and Search Engines(European Commission)
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