AWSが企業幹部向けに提供している生成AI入門講座からは、生成AIを社内に展開するコツや生成AIとの上手な付き合い方などが学べる。
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業界を問わず、企業は従業員に生成AI(人工知能)や、AIツールを効果的に使いこなせるようにするための教育計画を打ち出している。
メルセデス・ベンツは2030年までに22億ドル以上を投資し、従業員へのAI教育とデータ活用スキルの向上を図る意向だ(注1)。コンサルティング企業のマッキンゼーとPwCは(注2)、従業員を正しい回答を見分けられる優れたAIプロンプターにするため、スキルアップを図っている(注3)。商業用不動産会社のJLLは、デモや解説動画付きの従業員向け社内生成AIツールを展開している(注4)。
しかし、支援が必要なのは組織内の個々の従業員だけではない。知的労働者や技術的な専門知識を持つ従業員、そして高位の経営幹部も同様に、ワークフローへのAIの定着が進むにつれて、テクノロジーの使用による恩恵を受けられる。
ソフトウェア企業のFreshworksの調査によると、ITリーダーやその他の上層部の10人中9人以上が現在AIを業務で使用しているという(注5)。トップクラスの技術リーダーに至っては、AIの採用に関して下位の同業他社を圧倒している(注6)。
AIへの関心の高まりを受けて、ベンダー各社はスキル格差を是正するための解説動画や研修コースをリリースしている。AWS(Amazon Web Services)は2023年7月、幹部向けの生成AI入門コースを立ち上げた。内容は基礎的な要素や歴史的背景、技術の使用事例を網羅した5本の動画から構成される(注7)。
幹部がこのテクノロジーについて同僚と話すときにも、生成AIツールを自分で使うときでも、基本的な知識を持つことは助けになる。
AWSの生成AI入門コースから3つの重要なポイントを紹介する(注8)。
1.AI導入の鍵は"透明性"
幹部は経営戦略を指揮し、俯瞰(ふかん)的な視点を持つ立場にあるが、生成AIの実験や導入計画では現場に足を運び、従業員と対話する必要がある。
「最初のステップはチームとのコミュニケーションだ」とAWSは入門コースの中で述べている。人材管理サービスを提供するUKGが4000人以上の従業員を対象に行った調査によると、半数以上の従業員が、雇用主がどのようにAIを活用しているのか「知らない」という(注9)。
「人々は未知のものを恐れる傾向があるため、目標とその達成計画を共有することは、彼らの不安を和らげ、信頼を得るのに大いに役立つ」とAWSは述べている。
UKGの報告書によると、AIの透明性は職場文化を改善する可能性がある。調査対象となった従業員の半数以上が、「より幸せになり、自分の仕事以上のことができるようになる」と答えている。また調査対象の従業員の3分の2近くが、「企業としてAIをどう使うか、生成AIを使って達成したい目標やそれに向けた計画を従業員にオープンにすることで、仕事へのエンゲージメントと満足度が高まる」と回答している。
「何が得なのかを説明することだ。生成AIは、従業員にとってキャリアを変革するチャンスだ」とAWSは言う。
ハイパースケーラーは、計算量の多い生成AIのワークロードをサポートするために、その機能とインフラを強化している。
データセンターは従来、汎用(はんよう)計算を実行するCPUに依存してきたが、生成AIモデルはGPUやTPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)を必要とする。AWSのコースによると、GPUは当初、コンピュータグラフィックスを高速化するために設計されたが、並列ワークロードを効率的に実行する独自の能力により、数十億のパラメータを持つモデルのトレーニングにも活用できる。
最適化されたハードウェアに注力することで、半導体メーカーのNVIDIAは企業向けテクノロジーベンダーが信頼を寄せるリーダー的存在になった(注10)。ベンダー各社も、AWSが「Inferentia2」や「Trainium」、Googleが「Cloud TPU v5e」など(注11)(注12)、独自バージョンの次世代チップ技術をリリースしている。
AWSは動画の中で、「高性能なディープラーニングのトレーニングに特化した学習用チップは、費用対効果がはるかに高く、利用しやすくなっている」と述べている。
コンピューティングの進歩の他、ビッグデータにアクセスできるようになったことや機械学習(ML)に最適化されたTransformerアーキテクチャの登場などにより、基礎モデルを幅広いタスク向けに微調整できるようになった。
生成AIの勢いは、一部の人間が担っている役割が将来AIに取って代わられるのではといった不安を生じさせている(注13)。しかし、ベンダーやアナリストは、これらのテクノロジーを人間の労働者の代替ではなく、ツールとして使用するよう強調している。
「生成AIの成功の鍵は従業員だ。既存の従業員は、すでにあなたの会社、プロセス、人、システムに精通している」とAWSは言う。
AWSは、生成された回答の正確性や偏りを確認するために必要なスキルを従業員に提供すると同時に、より優れたプロンプターになるためのリソースを提供することが、スキル格差を埋める最善の方法であると述べている。
技術的に熟練した従業員には、新たなセキュリティリスクと、生成AIを搭載したハッカーから守るための戦略に関するトレーニングが必要だ。
組織は、生成AIポリシーを使用して従業員が利用できる範囲を制限できる。Procter & Gamble(P&G)は、社内で生成AIツールを展開した際、従業員には10分間のトレーニングセッションを受講した後、使用許容ポリシーに署名することを義務付けている(注14)。
(注1)Mercedes-Benz investing over $2.2B in AI reskilling(CIO Dive)
(注2)McKinsey rolls out generative AI tool ‘Lilli’ to 7K employees(CIO Dive)
(注3)PwC brings private generative AI tool to internal employees(CIO Dive)
(注4)JLL rolls out proprietary generative AI model to internal employees(CIO Dive)
(注5)5 tech execs share how they use generative AI at work(CIO Dive)
(注6)IT leaders all in on AI for their daily work: report(CIO Dive)
(注7)AWS launches generative AI primer course aimed at executives(CIO Dive)
(注8)Generative AI for Executives(YouTube)
(注9)Want AI buy-in at work? Champion transparency, research finds(CIO Dive)
(注10)Nvidia gears up for AI-fueled data center boom(CIO Dive)
(注11)The AI boom is reshaping the cloud business(CIO Dive)
(注12)Google Cloud unveils new TPUs in race to optimize AI hardware(CIO Dive)
(注13)Generative AI’s momentum casts uncertainty over the future of the IT service desk(CIO Dive)
(注14)How P&G rolled out its internal generative AI model(CIO Dive)
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