白熱するAI人材争奪戦 約5000万円の給与を支払う求人例もCFO Dive

AIスキルを持つ人材の雇用は多くの企業にとって優先事項だが、その大半は適切な候補者を見つけるのに苦労している。

» 2024年01月12日 07時00分 公開
[Alexei AlexisCFO Dive]

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CFO Dive

 AWS(Amazon Web Services)が実施した最近の調査によると、AI(人工知能)スキルを持つ労働者の雇用は、73%の雇用主にとって優先事項だが、その大半はそうした人材の確保に苦労している。

 各企業は、ビジネス機能全体にわたってAIスキルを持つ労働者の給与水準を引き上げる意向を示しており、平均として営業やマーケティング部門では43%、財務部門では42%、法務・規制・コンプライアンス部門では37%、人事部門では35%の給与が上昇する可能性があるという(注1)。

 「あらゆる部門で給与の上昇が予想されているのは、タスクの自動化や創造性の向上、成果の改善といったAIの主なメリットが広く応用されているためだ。雇用主は、AIのスキルを持つ労働者がさらなる生産性とより質の高い仕事を推進することで、給与アップにつながると予測している」と報告者は述べている。

白熱するAI人材争奪戦 約5000万円の給与を支払う求人も

 「The Wall Street Journal」は2023年8月、米国企業がAI人材採用強化の真っただ中にあり、優秀な人材を引き付けるために数百万ドルに迫る給与を支払う企業もあると報じた(注2)。その記事の中では、Amazonの「応用科学・生成AIシニアマネジャー」の募集をはじめとして高給なAI求人の例を幾つか挙げており、その給与は34万300ドル(日本円で約4931万円)になるものもあるという。

 AWSの調査では、42%の雇用主がAI開発の資格を持つ人材を積極的に探していることが明らかになった。しかし、AIスキルを持つ人材の雇用を優先事項と考えている雇用主の4人中3人近くに値する75%が、適切な候補者を見つけるのが困難だと報告している。

 テクノロジーに特化した公共政策コンサルタントのAccess Partnershipは、AWSの委託を受け、業種を問わず米国内における3297人の従業員と1340の組織を対象に調査を実施した。

 McKinsey & Companyによると、現在から2030年にかけて生成AIはほぼ全ての職種において最大70%のビジネス活動の自動化を可能にし、世界経済に数兆ドルの価値をもたらすという(注3)。

 Microsoftがスポンサーとなり調査会社IDCが実施した最近の調査によると、「CFO Dive」が以前に報告したように、企業はAIに1ドル投資するごとに平均3.50ドルのリターンを実現している(注4)。

 さらに市場調査会社ForresterのFuture of Workチームの主席アナリストであるベッツィー・サマーズ氏によると、企業がAI人材の危機に対処するために使っている戦略には、教育機関との提携やオンデマンド・ギグワーカーの活用などがある。

 「人事部長は人材の供給源に関して創造的な手段を検討しなければならなくなっている」と、サマーズ氏は2023年8月にForresterが主催したポッドキャストで語った(注5)。

 2023年11月はじめ、Amazonはより広い範囲で優先順位を変更し、新たな形態のAI開発に注力するために、「Alexa」部門で数百の役割を廃止しはじめたと報じられた。

 この報道の後、同社は2025年までに全世界で200万人にAIスキルのトレーニングと教育を無料で提供することを目的とした新たな取り組みを発表した(注6)。この取り組みの一環として、同社は社会人のAIスキル強化を支援する8つの無料コースを提供する他、オンライン学習プラットフォームを提供するUdacityと提携し、十分な教育を受けていない、あるいは十分な社会的立場にない世界中の高校生や大学生5万人以上に対し、1200万ドル以上の奨学金を提供すると発表した。

 同様にMicrosoftは2023年10月、LinkedInと共同で開発した無料のコースを含んだAIスキルの習得を支援する新たな取り組みを世界中で開始すると発表した(注7)。

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