財務・会計分野は生成AIで“劇的”に変化する 導入成功のコツは?CFO Dive

財務や会計のような分野に生成AIを取り入れる上で企業は何に注意すればいいのか。最優先事項を紹介しよう。

» 2024年01月09日 08時00分 公開
[Grace NotoCFO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CFO Dive

 「ChatGPT」が2022年後半に発表されて以来、生成AI(人工知能)はビジネスリーダーの間で話題の中心となっている。企業はこの革新的な技術に対して、広範にわたって潜在的な応用分野での実験を実施してきた。

 しかし生成AIの利用を巡り、規制や倫理、サイバーセキュリティに関する懸念も生じており、経営幹部は特定の分野における技術統合を慎重に進めることが重要だ(注1)。

生成AIが会計分野にもたらすメリットは計り知れない

 例えば財務や会計のような分野に安全かつコンプライアンスにのっとってテクノロジーを導入するためには、CFO(最高財務責任者)は正しいアプローチを構築する必要があると、文書共有ソフトウェア会社ShareFileのジェネラルマネジャーであるカート・ホイスナー氏は言う。

 同氏はインタビューで「財務責任者は生成AIを気軽に受け入れて学べばいいというわけにはいかない。というのも、倫理的な考慮事項が多過ぎて、財政的にも法的にもジレンマが生じる可能性があるからだ」と話す。

 「LinkedIn」のプロフィールによると、テクノロジーとソフトウェア業界のベテランである同氏はクラウドソフトウェア会社のCitrixに11年間在籍した後、約1年前にノースカロライナ州ローリーに本拠を置く同社にジェネラルマネジャー兼SVPとして移った。App-DNAとDell Technologiesでも重役を務めた経験がある。

 ホイスナー氏は生成AIの導入によって、会計分野は根本的かつ劇的に変化するだろうと予測し、このツールを注意深く見守っている他のテクノロジーおよびファイナンスのリーダーと同じことを述べた。

 財務のプロフェッショナルにとって、生成AIは脅威であると同時にチャンスでもある。「CFO Dive」は、CFOや会計士はAIに仕事が取って代わられることを潜在的に懸念していると以前報じた(注2)。同時に、経理担当者の人材不足やコスト、データ主導の世界におけるビジネスの性質の変化によって、このテクノロジーが組織や日々のワークフローにもたらす可能性のある利益にスポットが当てられている(注3)。

 今日のCFOは、経理スタッフの仕事がなくなることへの不安を和らげる一方で、生成AIやその他の新興テクノロジーをビジネスの経理プロセスに統合する最も効率的な方法を見つけるという2つの課題に直面している。また、透明性が高く、安全で、説明責任を果たすことができるようにこれらのテクノロジーを活用する方法を見つけなければならない、とホイスナー氏は言う。

 企業がどこへ向かっているのか、また、より明確で理解が深まるまでの過程においてどこで手を引くのかという疑問に答える上で、事業全体で生成AIをどのように扱うかを決定することは良いスタート地点だと同氏は話す。

 ポリシーに基づくガバナンスをAI導入の中心に据えることは極めて重要だ。経営陣は、例えばAIシステムが間違っていないかどうかを判断し、どのように対応するかといった将来の課題に対処するポリシーを文書化し、整備し始める必要がある。

 ホイスナー氏は「しかし生成AIと自動化は財務機能の効率化にも役立ち、会計分野の変革を推進する。従業員のワークフローに生成AIを導入することは、より経験豊富な役割や、より助言的な役割に成長するチャンスになる」と言う。

 「CFOは自分の組織内で実際に最適化するだけでなく、ビジネス全体にテクノロジーを導入する機会を探す必要がある」(ホイスナー氏)

生成AIを検討する際にCFOが考えるべき最優先事項とは?

 CFOは、生成AIのような新しいテクノロジーへの投資に対して、ビジネスにおける重要な役割を担っている。多くの企業、特に中小企業では、ITはすでにCFOの権限下にある。大規模な組織では、財務責任者は通常、最高情報責任者や最高執行責任者のような他の幹部と緊密に連携し、戦略的なテクノロジーの導入を推進している。

 CIOは財務責任者が持っている技術的知識の格差を埋めるのに役立ち、CFOはそのようなツールが必要な場所や配置可能な場所を確認するのに必要なビジネスの広い視野を持っている。

 「CFOが総合的な判断を下せなければ、組織の技術スタックは連携しないテクノロジーの非常に複雑なパッチワークキルトのようになり、ビジネスやワークフローを効果的に最適化することはできない」とホイスナー氏は話す。

 生成AIアプリケーションを検討する際には、明確で容易に伝達可能なデータプラクティスを開発することがCFOの最優先事項であるべきだ。このテクノロジーは大きな変革をもたらすだろうが、自社のデータを把握していなければ、企業はそれを推進することはできないと同氏は言う。

 データを効果的に活用し、システム間で情報を明確に共有できるようにすることを目指す組織にとって、時代遅れの技術や冗長な技術を削減することは重要だ。CFOのビジネスに対する全体的な視点は、時代遅れのソリューションやデータがボトルネックになっている箇所を特定するのに役立つ。

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ