筆者が“勝手に”この2年を振り返る クラウドやWeb3領域の取材裏話編集部コラム

「記事が公開されるまでにはいろいろなストーリーがある」ということで、筆者の印象が深い記事とそれにまつわるストーリーを紹介したい。

» 2023年12月27日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 筆者は2022年からクラウドやWeb3の領域で記者として活動してきた。もともと金融分野で活動していた身としては「分からないことだらけ」だったのは認めざるを得ない。ただ分からない身としてはそれなりに「教えてください」というスタンスでさまざまな取材をしてきたつもりだ。

 本稿ではそんな筆者の2年を振り返り、思い出に残っている記事とその裏話をゆるゆると語りたい。年末の忙しい時期ではあるが、お時間のあるときに目を通して「ふーん」と思っていただければ幸いだ。

初めての海外出張 一番の思い出はカジノ……?

 「ITmedia エンタープライズ」で活動を始めてから数カ月で、筆者は幸運にも米国出張のチャンスを得た。それが「Oracle CloudWorld 2022」(以下、CloudWorld 2022)だ。初めてということで勝手が分からず、かなりの荷物を持っていった記憶がある。慣れるとリュックに小さめのスーツケースで十分であり、リュックのみで出張に来る“熟練記者”の方にもお会いした。その方はITmediaのセキュリティニュースを担当してくれている。

 CloudWorld 2022の後にも複数回、出張を経験したものの、Oracleの「ホスピタリティー」の高さには本当に助けられた。食事はもちろん、現地でのリード、スケジューリングのうまさは他ベンダーより上だ(生意気言ってすみません。他ベンダーの皆さまにも感謝しております)。CloudWorldは一回目の海外出張に最適だが、これを最初に経験するとその後の出張が若干きつく感じるというデメリットもある。

 ちなみに、現在のCloudWorldは米国ラスベガスでの開催で、好きな人は空いている時間にカジノで遊べる(もちろん記事が書けていれば)。筆者は完全なるビギナーズラックでお土産代くらいは稼げた。一緒にプレーしていた日本オラクル広報のY氏(いつもお世話になっています)も最初は負けていたが、その後に取り返し、なぜか筆者が一安心した思い出がある。若造の筆者だけが勝つようなことがあれば勝ち分全額ベッドしようと思っていたからだ。カジノ見学はいろんな面白さがあるが、特に筆者が好きだったのはそれまで基調講演などに登壇していたエグゼクティブなどが死にそうな顔でカジノ台にいることだ。「さっきまであんないいこと言ってたのに……」と思いながら、彼らの落ち込んだ顔を見ていると何となく親近感が湧く。ちなみに当時はみんな暗い顔だったので、わざわざ声を掛けなかった。

 海外出張だけに限らないが、Oracleのホスピタリティは本当にありがたい。記者会見などで用意される弁当も一番うまいと、記者かいわいで有名だ。

2回目の出張からは記事執筆にも幅が増える

 CloudWorld 2022では初めてだったこともあり、基調講演などの決まった取材を記事化することが精いっぱいだったというのが正直なところだ。ただ2回目の米国出張「AWS re:Invent 2022」(以下、re:Invent 2022)では一回目の出張で得た経験をそれなりに生かすことができた。予定されているプログラムを記事化するだけでは他メディアと同じになるので、自ら現地で独自取材を組むことが重要だとCloudWorld 2022で気付いた。

 筆者は「なんちゃってイングリッシュ」を話すので、CloudWorld 2022では他国の有名記者などと関係を作り、その記者にre:Invent 2022では取材の助けを借りた。取材相手は「TechTarget Singapore」でエグゼクティブエディターを務めるアーロン・タン氏だ。その他にも日本から来ている企業に取材打診をしておき、現地で感想を聞くなどして、読まれる記事を書くことができた。

 ただ、re:Invent 2022で特に印象に残っている記事は「AWSのCEOが発表した13の新たなサービス これさえ読めば全て分かる」だ。記事をまとめようにもあまりにも発表が多く、どうすればよいか迷っていたところ「こりゃもう攻略本みたいにするしかないな」と思い、ひねり出したタイトルがこれだ。「これさえ読めば全て分かる」なんて書いたのはいいが「もし情報が足りてなかったらどうしよう」と不安になったのは間違いない。ただ現地担当者にも裏は取っていたし、とにかく早く公開すれば読まれると分かっていた。結果的にこのタイトルと公開までのスピードは評判が良かった。

バズワード「Web3」を追う

 2022年はWeb3がバズった年だった。それ以前から暗号資産などがバズっていたものの、toB向けという観点でいうと、2022年はWeb3にとって特別だった。実際に多くのIT企業がWeb3関連のサービスを打ち出していた。現在の生成AI(人工知能)ほどまではいかずとも、どこの企業もWeb3に必死で、2023年に入ると日本政府もWeb3を成長戦略の一つにした。

 そんな中、筆者は「Web3 News」(現在は「Web3って『結局どないやねん』」に改名)も担当し、toB向けのWeb3情報を発信してきた。特に記憶に残っているのは「AstarとAWSに聞く Web2.0とWeb3の協力が生み出す新たな価値」だ。当時は、従来企業を指すWeb2.0とWeb3が対比的に語られることが多くあったが、この記事ではWeb3起業家の渡辺創太氏(Startale Labs CEO)と、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの畑 浩史氏(スタートアップ事業開発部 本部長)が、ぞれぞれの立ち位置と協力することの意味を語っている。Web3かいわいでは「理想論者」が多く存在し、「Web3と従来企業が協力するなんておかしい」という意見も少なくないが、そのような意見に対してWeb3で有名な渡辺氏とハイパースケーラーであるAWSの畑氏の対談は新鮮だった。

 最近では「Web3って生成AIブームで落ち目?」といった意見も聞く。ただ現状は少し違う。これまでの「バズフェーズ」が終了し、リアルなユースケースが広がっているのが今だ。このようなWeb3のリアルな変化を聞いたのが「生成AIにブームを持っていかれた? 実はWeb3の今後も楽しみなワケ」だ。これはアクセンチュアでWeb3事業に取り組む有識者の方々に、「Web3ってどうなりましたかねえ……」と聞いたものだ。正直言って、筆者も参加したくなるようなWeb3プロジェクトが誕生しており、生成AI同様今後が楽しみだなと筆者は感じた。

初めての英語取材で「褒められた」経験がその後も生きる

 海外ベンダーの方などを取材するときは基本的に通訳が付くのだが、中には自分で話さなければならないものもある。そんな経験をしたのが「Rubrikが最大500万ドルのランサムウェア復旧保証サービスを発表 セキュリティサービスへの自信を聞いた」だ。

 なぜ英語取材だったのかは明確に覚えていないが、おそらく代理店などに「通訳はいなくても問題ないか」みたいなことを聞かれ、格好をつけて「いりません」と答えたのだと思う。ただの会話と違って取材英語となると若干緊張するのだが、「とにかくやってみたら慣れるだろう」くらいの感覚で挑戦した。

 英語取材でも日本語取材でも、基本的には質問案通りに取材を進めようとするのだが、結局は質問案に固執せず、自然に話したほうが楽しいしインタビュイーもいろいろと話してくれることが多い。

 Rubrikの取材も質問案はあったが、結局フランクにべらべらと話した。印象的だったのは取材後に、当時のRubrikでプレジデントを務めていたダン・ロジャーズ氏から「日本で行ってきた取材で一番よかった」という言葉をいただいたことだ。この経験以来、さほど緊張せず英語取材ができるようになった。代理店の方にも英語ができると認知され、その後も英語取材の機会をいただけるようになり、何かと自分にとってはうれしい取材だった。

 他にもたくさん、紹介したい記事やストーリーがあるのだが、さすがに全ては書けないのでこのあたりで終わりにする。2024年1月以降は転職し、ITmedia エンタープライズの編集部員ではなくなるが、今後も取材活動などは続ける予定だ。最後まで読んでくださった読者の方々にはこの場を借りて感謝申し上げたい。これからもどこかで筆者の記事を読んでいただけるよう、精進するつもりだ。

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