NTTデータにみる「ITサービス企業のこれからの姿」 同社が目指す「社会変革プロデューサー」を通して考察Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年02月05日 16時05分 公開
[松岡 功ITmedia]
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課題は経営コンサルティング力

 佐々木氏は講演後の会見で、改めて「当社は社会変革プロデューサーを目指し、社会システム変革をリードする」と強調し、次のように述べた(図3)。

図3 IT企業の役割の拡大(出典:NTTデータの会見資料)

 「IT企業の役割が最近になって拡大してきた。これまでは個々の企業や行政機関にシステムを提供してきたが、特にスマートフォンが普及したことで生活者との接点までITの役割が広がってきた。それによって社会システム全体の設計や実装を担うケースが増えてきている」

 同氏はこうしたIT企業の役割の拡大が、社会変革プロデューサーの発想につながったことを明らかにした。

 今のNTTデータは、2023年7月にNTTデータグループが再編して誕生した国内事業会社だ。同氏はその国内事業を成長させる源泉として、提言して終わりではなく顧客の成果に結び付く提言を行うことを磨く「デジタル競争力の強化」と、システムの構築力・運用力をさらに磨く「エンジニアリング力の強化」の2つを挙げた。

 後者のエンジニアリング力は同社がもともと得意とする領域だが、前者のデジタル競争力はすなわちコンサルティング力のことで、同社が今最も注力している領域だ(図4)。

図4 国内事業成長の2つの源泉(出典:NTTデータの会見資料)

 コンサルティング力の強化について、佐々木氏は次のように語った。

 「コンサルティングによってお客さまのビジネスの成果に結び付けるためには、お客さまの経営アジェンダにフォーカスした取り組みへとシフトすることが肝要だ。この領域は、外資系のコンサルティングファームが得意としているが、それにしっかりと対抗できる能力を身に付けていきたい」

 また、同氏はコンサルティング力の強化をはじめとした国内事業の成長の手段として、M&Aも積極的に行っていく姿勢を示し、2025年度までに1000億円規模を投資することを明らかにした(図5)。

図5 国内事業の成長手段としてM&Aも積極展開へ(出典:NTTデータの会見資料)

 以上が、NTTデータの発信内容だ。同社が掲げる「社会変革プロデューサー」はまさしくITサービス企業のこれからの姿を示唆しているのではないか。ただ、課題として浮かび上がるのは、佐々木氏も言及した「経営コンサルティング力」だ。

 NTTデータは具体的にどう強化していくのか。会見で質問したところ、同氏は次のように答えた。

 「現在、当社には2400人ほどのコンサルタントがおり、業務プロセスの改革などはこれまでも手掛けてきた。ただ、IT企業の役割が広がるのと同様、お客さまの経営課題も広がっている。それをしっかりと捉えることからお客さまと一緒になって動く機会が増えてきている。そうしたお客さまの要望にお応えできるコンサルタントの育成に今注力している」

 経営コンサルティング力は、NTTデータに限らず、どのITサービス企業にとっても課題であり、今最も注力しているところだ。一朝一夕に育成できる領域ではないが、一方でDX(デジタルトランスフォーメーション)によって経営の在り方が変わる中においては、新たな事例作りが最大のPR効果になり得るだろう。佐々木氏もコンサルティング、さらに社会変革プロデューサーの実績については事例作りに注力する姿勢だ。

 この動きは、ITサービスの今後の在りようを示すものだ。注視していきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身

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