富士通、NEC、NTTデータの最新受注から探る「2024年国内IT需要の行方」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年02月13日 15時15分 公開
[松岡功ITmedia]
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「国内IT需要は今後も堅調だ」(NTTデータ)

 NTTデータグループが2024年2月7日に発表したITサービスにおける第3四半期の国内受注状況は、全体で前年度同期比3.3%増の3481億円(9カ月累計で同22.7%増の1兆1558億円)だった。

 業種別では、「公共」が前年度同期比19.5%増の1115億円(9カ月累計で同44.9%増の4762億円)、「金融」が同16.8%増の1328億円(同30.3%増の3714億円)、「法人」が同22.6%減の901億円(同7.7%減の2633億円)となった。同社は2023年7月から持ち株会社のNTTデータグループの下で、国内事業会社のNTTデータと海外事業会社のNTT DATAが活動する形となった。海外事業会社にはこれまでのNTTグループの海外事業が集約された(表3)。

表3 NTTデータグループの各分野における2023年度第3四半期の受注状況(出典:NTTデータグループの決算資料)

 この受注状況について、同社で財務・IRの責任者を務める中山和彦氏(取締役副社長執行役員)は決算会見で次のように説明した。

NTTグループの中山和彦氏(取締役副社長執行役員)

 「9カ月累計の国内受注状況では、公共で中央府省向け、金融で地域金融機関向けの大型案件を獲得してそれぞれ大きく伸長した。法人は減少したが、これは前年度同期に獲得した小売・消費財向け大型案件受注の反動によるものだ」

 2024年の国内IT需要の見通しについて同氏は、「当社では国内IT市場の成長率を、2023年度で5.0%、2024年度(2025年3月期)は5.8%と見ており、それを踏まえて2024年度および中長期の事業計画を現在策定中だ」と述べた。

 また、この見通しについて、別の機会に国内事業会社NTTデータの佐々木 裕氏(代表取締役社長)にも聞いたところ、「国内IT需要は今後も堅調だと見ている。当社は、公共や金融では一定のポジションを獲得しているが、法人分野ではまだまだシェアが低いことから“伸びしろ”が十分にあると見ているので、今後注力していきたい」とのことだった。

 以上が、第3四半期決算におけるITサービス大手3社の国内受注状況と、それを踏まえた2024年の国内IT需要の行方だ。

 「今後に向けた受注残高も高水準で積み上がっている」(富士通)、「需要が減少に向かう兆しは今のところない」(NEC)、「国内IT需要は今後も堅調だ」(NTTデータ)といったように、3社とも2024年の国内IT需要についての見通しは明るいようだ。

 とはいえ、ハイパースケールのクラウドサービスをグローバルで展開するMicrosoftやGoogle Cloudに目を向けると、生成AIをはじめとしたDX需要を取り込みながら、直近の四半期の売上高で前年同期比30%前後の伸長を遂げ、巨大な事業体ながらもさらに勢いを増した印象だ。上記の3社をはじめ国内のIT企業もそうした需要拡大の勢いをしっかりと取り込めるようにしたいところだ。

 一方で、NECの藤川氏が指摘したように、2024年は国際情勢の変化がこれまでにも増して国内の景気動向に大きな影響を及ぼす可能性がある。1980年代後半のバブル期に迫る株高もバブル崩壊後の在りようを取材してきた筆者には危うく感じる。そうしたリスクにも注意を払っておく必要があろう。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身

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