バックアップの基本ルールとしては3-2-1ルールがあります。これは“3つのデータコピーを作成”し、“2つの異なる媒体”に保存、そして“1つはオフライン”に保存するというものです。
データの保存において、ローカルに置かれたもの、もしくはクラウドサービスに保存したものを1カ所とすれば、それ以外に2カ所、保存しておきましょうというのが最初のステップです。これは、外付けストレージを2つ買えば解決できるでしょう。筆者も実際、このルールでバックアップ運用をしていたためデータを失うことを防げました。
“2つの異なる媒体”に保存する方法について、捉え方はいろいろあるかもしれませんが、本来であれば企業などでの「テープドライブによるバックアップ」が相当します。家庭ではなかなか2種類以上のメディアに保存することは難しいかもしれませんが、先の外付けストレージが2種類あれば実現できるはずです。
遠隔地でのオフライン保存についても、基本的には企業におけるバックアップと考えていいでしょう。筆者もこれは実現できておらず、一応過去のデータを詰め込んだストレージを、念のため非常用持ち出し袋に入れています。個人においては、これを「オフラインのメディアにバックアップし、必要なとき以外は接続しない」と置き換えても良いかもしれません。
ここで重要なのは、媒体の故障だけでなく「誤って」削除することを想定してほしいということです。筆者の経験からお話しすると、データ消失のほとんどが手動で削除したことに起因していて、こればかりはどのようなツールでのバックアップもカバーできないことがほとんどです。クラウドストレージ側でバックアップしているから、NASに保存しているから安心と思っても、自らが消す想定をしておかないと、いつかトラブルが起きてしまうでしょう。
これらの作業はできれば自動化、あるいは月末のルーティンとしておくことが理想です。定期的にこれを実践できていれば、毎月どんなものを見た、や、どのくらい仕事した、といった区切りになるのではないかとも思います。
「Windows」や「macOS」にはバックアップ機能が標準で搭載されており、個人で使う分には困ることはないでしょう。PCを普段から十分に活用しているという方は、今のうちに方法を調べておくと良いかもしれません。
スマートフォンにおいては、機種変更が定期的に発生することもあり、GoogleやAppleが提供するクラウドを活用しつつ、ほとんど意図することなくバックアップが常時実行されています。そのうちほとんどの仕事はタブレットやスマートフォンなどでできるようになる可能性が高いので、バックアップという考え方はほとんど意識されなくなるかもしれませんが、PCを使う以上、やはり利用者自身が意識しつつ、しっかりとデータを守る必要があります。
そのためには、作成したファイルや受け取ったファイルを整理するところから始め、期間を分けてフォルダで整理し、そこ以外には置かないという取り決めを自分の中で作ることが重要です。個人的にはバックアップ作業の9割は、そういった細かな部分だと思います。
サイバー攻撃者が狙うのは、あなたが撮影した写真や友人知人からもらった大事なファイル、そして企業が持つさまざまな文書など、そこにしかない「データ」です。そこにしかないからこそ“人質”として有効で、それを取り戻すためには対価を支払ってもいいいう状況を作るのです。
昨今、暗号化を伴わない、純粋な脅迫である「ランサム攻撃」(非ソフトウェアという意味での「ノーウェアランサム」)も増えていますが、個人のデータは自分も消してしまうリスクがあるわけですので、やはりバックアップをしなければならない、という結論になります。
バックアップはセキュリティの基本中の基本ですが「自信がある」という人はほとんどいないはずです。失敗話を共有することがバックアップの重要性を見直すきっかけになると信じ、今回は筆者の恥ずかしい話を打ち明けました。
筆者の場合、問題は非常用持ち出し袋に入れた過去のデータもSSDだという点です。さて、どうしようか……。
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