仕事が多すぎて経理のミスが多発 解決するコツは? 技術導入時に考えること

ただでさえ業務過多でミスが起こりがちな経理担当者に対し、法や監査の厳しさが追い打ちをかけている。技術導入で疲弊する経理担当者を救うことはできるが、成功には“コツ”を理解する必要がある。

» 2024年03月22日 08時00分 公開
[Jim TysonCFO Dive]
CFO Dive

 Gartnerの調査によると、世界各国497人の経理担当者のうち59%が、過剰な業務負担の増加により毎月数件のミスを犯していることが明らかになった。

技術導入でミスの削減は可能 ただし、そのために越えるべきハードルも……

 同調査結果によると、過去3年間に制定された法規制によって業務量が増加したと答えた経理担当者は73%に上り、82%は不安定な経済状況が原因で時間的制約が厳しくなったと回答している(注1)。

 Gartnerの財務部門のマロリー・バーグ・ブルマン氏(リサーチ担当シニアディレクター)は「経理部門の業務過多は今に始まったことではないが、経理担当者のリソースに対して要求は高まり続けている。このような圧力が増加し続ければ、すでに限界に近い状態で対応している経理担当者は一層追い詰められ、ミスをする可能性が高まるだろう」と述べている。

 「業務過多に陥っている経理担当者は、データの解釈ミスや記録の不十分なレビューなどさまざまなミスを犯しており、これらのミスは手作業を行っている最中にも発生する。例えば時間に制約のある決算期には、取引先からの書類の提出が遅れると経理担当者はデータが正しいかどうかを急いでチェックしなければならない」(ブルマン氏)

 また、誤ったデータの修正に多くの時間を費やす必要がある場合、連結会社間における取引相殺のための時間がほとんど取れなくなり、複雑な取引の不適切会計につながりかねないとブルマンは述べた。

 同氏は、幾つかの新規制や変更された規制が経理担当者への負担を大きくしていると述べ、その例としてリース会計基準の変更(IFRS16)、2023年の英国の新たな移転価格の記録に関する規則(Transfer Pricing Records Regulations)、2021年と2023年に行われた付加価値税のデジタル化(Making Tax Digital for VAT)などを挙げている。

 さらに同氏によれば、経理担当者は経済成長の鈍化に起因する記録管理の要求への適応にも苦戦しているという。

 「過去10年間の企業業績を支えた追い風は、需要の伸び悩みや高止まりするコスト、資本の制約を伴う『デッドウェイト経済』(重荷の経済)へと変わりつつある。その結果、経理担当者はキャッシュフローと企業のバランスシートの健全性にもっと注意を払い、企業業績の低迷に神経をとがらせている投資家からの厳しい監視に対応しなければならない」(ブルマン氏)

 同氏によれば、経理担当者は幾つかの基本的な前提を覆す必要があるという。

 「このような環境下で業績をけん引する資産は、これまで業績をけん引してきた資産とは異なる。無形資産は重要だが会計処理が難しく、データは資産として評価されないが、業績を促進するのに役立つといった具合だ」(ブルマン氏)

 Gartnerによると、企業は導入する技術を使いやすく、学習しやすく、カスタマイズしやすくすることで、財務ミスを75%も減らせるという。また経理担当者は必要な情報を一度に見られるようにすべきだ。

 「経理担当者が会計に使用している技術を受け入れると、それをより効果的に使用して処理能力の向上を実現し、ミスを大幅に減らせることが明らかになった。最新技術があるのに従業員から反発されるより、技術が劣っていたとしても受け入れてくれる従業員がいる方が好ましい」(ブルマン氏)

 Gartnerは、米国や英国、シンガポール、インド、オーストラリア、ニュージーランドのさまざまな業種の経理担当者を対象に調査を行った。回答者は企業の財務責任者、最高会計責任者、または経理部長に直接もしくは間接的に報告をしている。

 米国企業の会計帳簿を監査する経理担当者はここ数カ月、米国上場企業の会計帳簿を監査する会社を規制する公開企業会計監視委員会(Public Company Accounting Oversight Board、以下PCAOB)から非難を受けている。

 PCAOBの委員長であるエリカ・ウィリアムズ氏は2023年10月、検査官が審査する2022年の監査の40%でミスが発生する可能性が高いと述べ、多くの監査人が確かな証拠で意見を裏付けていないことを指摘した(注2)。

 同氏によれば、監査報告書では2021年に5ポイント上昇した監査ミスの割合が、2022年には6ポイント上昇することが予想されるという。

 2023年11月に同氏は、監査ミスの増加を人材不足のせいにしている監査人を非難し、「国内外の企業の監査品質が2年連続で間違った方向に向かっている傾向にある」と指摘した。

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