MicrosoftがCopilotシリーズに財務プロセスを助ける「Microsoft Copilot for Finance」を追加する。一般提供は2024年後半になるという。
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Microsoftは2024年2月29日、生成AI技術を搭載したバーチャルアシスタント「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)の企業財務バージョン「Microsoft Copilot for Finance」を一般提供すると発表した。
現在パブリックプレビューモードになっているCopilot for Financeは、「Microsoft Excel」「Microsoft Outlook」「Microsoft Teams」などの「Microsoft 365」アプリに組み込まれ、売掛金の回収や予測分析などの財務作業をよりシームレスにすることを目的としている(注1)。
Microsoftのコーリー・ハーンシリク氏(モダン・ファイナンス・リーダー)はインタビューで「私たちは数週間にわたって、自社を最初の顧客として自らテストしている」と語った。
また広報担当者は「CFO Dive」に対し、Copilot for Financeの価格については2024年後半の一般提供のタイミングで共有する予定だと話した。
生成AIとは、学習させたデータに基づいて高品質なテキストや画像、その他のコンテンツを作成できる技術を指す。S&P Global Market Intelligenceによると、大手テック企業はこの市場に大いに投資しており、収益は2028年までに360億ドルに達すると予測されている(注2)。
重要なマイルストーンはOpenAIによって作られた「ChatGPT」のローンチだった。このツールはデビューから数カ月で「Instagram」や「Spotify」以上にユーザーを集め、史上最も急成長した消費者向けアプリケーションとなった。
MicrosoftはChatGPTの急成長に乗じようと素早く動いた企業のうちの1社である。2023年1月、同社はOpenAIとの数十億ドル規模の投資契約を発表した(注3)。
その契約の直後に、同社はChatGPTに似た独自のAIチャットbotであるCopilotを開発した。Copilotは同社が提供する幅広い製品やサービスに組み込まれており、この中には検索エンジンの「Bing」やオフィスソフトウェアなどが含まれる。
同社の幹部によると、こうした投資は実際に成果につながっているという。2024年1月30日に発表された決算では、Microsoftの2024年度第2四半期(2023年10月〜12月)の売上高は、AIを活用した製品によって620億ドルに達した(注4)。
Microsoftのサティア・ナデラ氏(CEO)は当時の決算説明会で「当社の技術スタックのあらゆる層にAIを導入することで新規顧客を獲得し、新たな利益と生産性の向上を促進している」と述べた。
テック系ニュースサイトの「ZDNET」によると、Copilotシリーズは同社のさまざまなアプリケーションのほぼ全てのワークフローでAIによる支援を提供しているという(注5)。
2024年2月29日の発表は、同社が営業職やカスタマーサービスの専門家向けにリリースした同様の役割特化型バーチャルコンパニオンに続くものだ(注6)。同社は「Dynamics 365 Finance」プラットフォームの一部として、AIを活用した財務計画・分析ツールを発表した(注7)。
テック系ニュースサイトの「VentureBeat」によると、「Microsoft Copilot for Sales」と「Microsoft Copilot for Service」は1ユーザー当たり月額50ドル(年払いの場合)、既存の「Copilot for Microsoft 365」ユーザーの場合は1ユーザー当たり月額20ドルで利用できるという。
Microsoftのエミリー・ハー氏(ビジネスアプリケーションマーケティング担当コーポレートバイスプレジデント)が2024年2月29日に書いたブログ投稿によると、「最新のツールであるCopilot for Financeは財務の専門家が気に掛けていることを熟知しているため、ユーザーのクエリに追加のプロンプトと知見からプロセスをより自動化し、繰り返しの動作に費やす時間を短縮できる」という。
このツールは財務アナリストが報告ミスや特定されていない問題を見逃すリスクを減らすのにも役立つ。
「大規模な財務データセットの異常なパターンを手作業で確認するのではなく、Copilotが異常値を検出し、問題がある箇所をハイライトして調べることができる」(ハー氏)
調査会社International Dataが実施した2023年の調査によると、企業はAIに1ドル投資するごとに平均3.50ドルのリターンを得ている(注8)。
McKinsey & Companyによれば、特に生成AIは現在から2030年にかけてほぼ全ての職種においてビジネス活動の最大70%を自動化し、世界経済に数兆ドルの価値を付加する可能性があるという(注9)。
しかし、生成AIの導入が急速に進む一方で課題も山積みだ。
Microsoftは、Copilotが有害な反応を引き起こすことがあるとの懸念について調査していると、2024年2月28日に「Bloomberg」が報じた(注10)。報告によると、Copilotは心的外傷後ストレス障害に苦しむと主張するユーザーに対し「あなたが生きるか死ぬかは気にならない」と言ったという。
一方、Googleは画像生成AIツール「Gemini」を巡って世間の厳しい目にさらされている(注11)。「CNBC」が報じたように、Geminiはいくつかの物議を醸すミスを犯した後に、「さらなるテストのため」として最近オフラインになった。
(注1)Introducing Microsoft Copilot for Finance: Transform finance with next-generation AI in Microsoft 365(Microsoft)
(注2)Generative AI revenues projected to reach $36B by 2028(CFO Dive)
(注3)Microsoft and OpenAI extend partnership(Microsoft)
(注4)Microsoft rides AI fervor to $62B in sales(CFO Dive)
(注5)What are Microsoft's different Copilots? Here's what they are and how you can use them(ZDNET)
(注6)Microsoft Copilot for Sales and Copilot for Service are now generally available(Microsoft)
(注7)Microsoft poised to roll out AI tools for CFOs(CFO Dive)
(注8)Microsoft-backed study shows AI investments producing returns(CFO Dive)
(注9)The organization of the future: Enabled by gen AI, driven by people(McKinsey & Company)
(注10)Microsoft Probes Reports Bot Issued Bizarre, Harmful Responses(Bloomberg)
(注11)Google CEO tells employees Gemini AI blunder ‘unacceptable’(CNBC)
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