セキュリティベンダーの資金調達は3年ぶりの低水準 採るべきビジネス戦略とはCybersecurity Dive

Pinpoint Search Groupによると、2024年第1四半期の資金調達額は23億ドルに達したが、2021年第4四半期の80億ドルと比較すると低い数値となった。資金調達額が縮小する中、大手サイバーセキュリティベンダーはどのようなビジネス戦略を採るのか。

» 2024年04月24日 07時00分 公開
[Matt KapkoCybersecurity Dive]

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Cybersecurity Dive

 テクノロジー領域に強みを持つ人材紹介企業であるPinpoint Search Groupが2024年4月4日(現地時間)に発表した報告書によると、サイバーセキュリティ市場における、2024年第1四半期の資金調達取引額は23億ドルで(注1)、これは前年の同四半期と比較して20%減少している。

資金調達額が縮小する中、大手サイバーセキュリティベンダーが採る戦略

 2024年第1四半期にサイバーセキュリティベンダーが実施した資金調達ラウンドは77件で、Pinpoint Search Groupが追跡した前年同期の75件からわずかに増加した。第1四半期の資金調達取引のうち、シードラウンドは5件に2件を占め、2023年の資金調達額と同水準であった(注2)。

 M&Aの件数も前年同期比で減少している。2023年第1四半期には31件のM&Aがあったが、直近の四半期では24件に減少した。

 Pinpoint Search Groupの調査によると、サイバーセキュリティベンダーに流入するベンチャーキャピタルの資金の額は、前四半期に記録した3年ぶりの低水準に近い状態が続いている。投資額は、2021年第4四半期の最高額80億ドルから急激に減少した後、2022年下半期に縮小し始めた。

 MicrosoftやPalo Alto Networks、CrowdStrikeなどの大手サイバーセキュリティベンダーは、企業がシングルポイントソリューションからの脱却を模索する中、サイバーセキュリティに関する支出を単一のベンダーに統合するよう働きかけている。

 Palo Alto Networksは2024年2月に、市場全体の変化に対応するため、自社の戦略を「プラットフォーム化」と呼ばれるものに移行した。この戦略では、他のベンダーと契約を締結している顧客を取り込むために、無料のインセンティブが活用されている(注3)。

 CrowdStrikeの幹部は、最大の競合他社であるPalo Alto Networksの戦略を批判し(注4)、請求の延期や大幅な割引によって他ベンダーから顧客を引き離すようなスキームを自社では採用しないことを決定した。

 Pinpoint Search Groupのマーク・サッソン氏(創設者兼マネージングパートナー)は、声明の中で次のように述べている。

 「資金調達の減少は好ましくない事象にも見えるが、その背景にあるものを考慮することが重要だ」

 Pinpoint Search Groupによると、サイバーセキュリティ業界の資金調達は、第1四半期の最終月である3月に急増し、42ラウンドで14億ドルの調達が実施された。資金調達額が単月で10億ドルを超えたのは2023年2月以来だった。

(注1)Cyber Security Vendor Funding Report Q1, 2024(PINPOINT SEARCH GROUP)
(注2)Cyber funding and M&A drop in 2023(Cybersecurity Dive)
(注3)Palo Alto Networks’ free incentives offer sparks investor anxiety(Cybersecurity Dive )
(注4)CrowdStrike dodges pricing war with Palo Alto Networks(Cybersecurity Dive)

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