従業員が企業の許可なく使用するシャドーITの代表格にはLinkedInやCanvaなどが挙げられるが、2023年はChatGPTが首位に立った。この状況はCIOにとって好ましい状況ではない。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
企業向けソフトウェアの管理ツールを提供するProductivは、2023年にOpenAIの大規模言語モデル(LLM)アプリケーション「ChatGPT」がシャドーITの王座に輝いたと発表した(注1)。これは、2021年から収集した約1億のSaaSライセンスにおける1000億以上のアプリ使用データポイントを分析した結果によるものだ。
ChatGPTは「LinkedIn」「Canva」「Adobe Acrobat」などの人気シャドーITツールを抑え、企業の管轄外で使用された初のAIネイティブアプリになったと報告書では述べられている。
Productivの創設者兼CEOのジョディ・シャピロ氏は「CIO Dive」の取材に対し、「企業は従来のシャドーITの使用に関してはしっかり把握できるようになっており、より優れたガバナンスポリシーも作っている。しかし生成AIについては、歯磨き粉がチューブから飛び出ているかのように管理し切れなくなっている状態だ」と述べた。
2023年、企業は予算が逼迫(ひっぱく)する中でSaaSが乱立することを防ぎ、ガバナンスの追い付かないアプリケーションの導入を抑制しようと奔走し続けていた(注2)。
報告書によると、企業はアプリケーション数を前年比10%削減し、その平均数は2022年の374から342に減少したという。
ProductivはシャドーITの減少に関しても追跡しており、企業アプリケーション群全体のうち企業の許可を得られていないSaaSツールの数は、前年の最高値53%から48%に減少したようだ。
同社は、経費計上されたアプリケーションやネットワーク監視ツールによって発見されたアプリケーション、またはGoogleのシングルサインオンを通じて明らかになった管理されていないアプリケーションをシャドーITとして分類している。
「ポートフォリオには、管理されていると見なされるアプリケーション群とそうでないものがある」(シャピロ氏)
CIO(最高情報責任者)がシャドーITを抑制するまでの過程で、企業は生成AIという新たな敵と対峙(たいじ)している。
分析によると、LLMを搭載したツールや既存アプリケーションへの生成AIの機能追加が、SaaSのガバナンスにおける最大の脅威となっているという。ベンダーは、LinkedIn、Canva、「Evernote」など、一般的に追跡されているシャドーITアプリのほぼ全てにAI機能を組み込んでいる。
「ベンダーとしては、このリストの上位にランクインしたことは喜ばしいことだろう。これは第三者による成功の証明と言える。全てのアカウントで商機につながる可能性が高く、従業員にとって満たされていないニーズがあることを示す指標となる」(シャピロ氏)
2023年、ほとんどの組織において従業員が新技術を採用するスピードはガバナンスを確立するよりも早いことが、非営利研究団体のThe Conference Boardによって明らかになった(注3)。しかし、企業のリーダーはそれに追い付こうと必死だ。
「彼らはこれらのツールの使用を否定しているわけではない。従業員がツールを採用し始める前に、正式に許可を求めることを望んでいるだけなのだ」(シャピロ氏)
(注1)State of SaaS(Productiv)
(注2)Average software waste hit $18M last year despite optimization push(CIO Dive)
(注3)Company policies lag behind workforce adoption of generative AI(CIO Dive)
© Industry Dive. All rights reserved.