データの活用に向けて準備をしている企業が増えている。データやアナリティクスに関して責任を持つCDAOを設置した企業はどう考えているのかを、幾つかの事例から見ていく。
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Gartnerが約500人のデータアナリティクスの最高責任者(CDAO)を対象に2023年9〜11月に実施した調査によると、企業は生成AIの導入を推進する中でデータ戦略の見直しを急いでいることが分かった(注1)。
同調査では、AI技術がもたらす影響に対応するため、5社中3社以上の組織が2023年にデータ運用のプロセスを強化したことが明らかになった。また回答者の3分の1以上が、今後12〜18カ月の間に見直すつもりと答えたという。
Gartnerのアラン・ダンカン氏(ディスティングイッシュト・バイスプレジデント・アナリスト)は、データ運用に注力する中でCDAOの役割が高まっているとリリースで述べた。
「組織のデータとアナリティクスの運用管理は年々重要度を増している。AIを実現する重要な要素の大半に責任を持つ役割は、CDAO以外にはない」(ダンカン氏)
堅牢(けんろう)で機敏なデータ基盤がなければAI戦略が成り立たないことを、組織は認識しつつある。これに対応して、American Hondaのボブ・ブリゼンダイン氏(IT担当副社長)はデータ部門をIT組織のトップに昇格させたと、2024年3月の「CIO Dive」のイベントで述べた(注2)。
最高AI責任者(CAIO)も一般的になってきた。LinkedInの調査によると、AIのリーダー的役割を担う組織の数は5年間で3倍以上に増えている(注3)。
金融サービス大手のJPMorgan Chaseは2023年夏、データ責任者としてAI担当者を抜てきした注目企業の1社となった。同社は2023年6月、テレサ・ハイツェンレザー氏をCDAOに任命し、企業のAI導入の指揮を執らせた(注4)。
Gartnerの調べによると、企業はデータとアナリティクスの運用を強化するに当たりIT部門に依存しているという。データおよびアナリティクス業務の拡大を課題としている回答者の数は前年比で40ポイント増加しており、データ人材の層を厚くし、ガバナンスを強化する動きが加速している。
不動産サービスを展開するCushman & Wakefieldのショーナ・カートライト氏(ビジネス・インフォメーション・オフィサー兼企業向け技術担当シニアバイスプレジデント)によると、同社は2023年、AI業務をサポートするためにIT部門にデータ専門チームを設置したという。同氏はCIO Diveのパネルディスカッションにも登壇し、財務や法務、その他のビジネス機能全体でデータ能力の強化に注力していると話した。
CDAOの役割の成長は、複雑化するITエコシステムの中でサイロ化されたデータを活用する難しさを反映している(注5)。
フィンテック企業Intuitのアロン・アミット氏(製品・分析・AI・データ担当バイスプレジデント)はCIO Diveのパネルディスカッションで、企業データの収集は専任で取り組む必要のある仕事だと述べた。同社は2019年、データ運用とAI実装の専門としてアミット氏と彼のチームを迎え入れた。
Gartnerの調査によると、データ部門の責任者の最大の課題は資金面の制約だったが、2023年は回答者の3分の2近くが予算の増加を見込んでいた。
コストを価値に結び付けることが、企業の財布のひもを緩めるためには必要だ。回答者の半数近くが、データへの投資のビジネス上のメリットを示すためにパフォーマンス指標を作成したと答えている。
(注1)Gartner Survey Finds 61% of Organizations Are Evolving Their D&A Operating Model Because of AI Technologies(Gartner)
(注2)American Honda gives data a promotion on the road to AI(CIO Dive)
(注3)What is a chief AI officer ― and do you need one?(HR Dive)
(注4)JPMorgan Chase appoints tech chief to lead AI adoption(CIO Dive)
(注5)IT teams grapple with AI data complexity(CIO Dive)
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