重工業を中心にグローバル企業での導入実績が多いIFSが、日本市場での事業拡大に本腰を入れる。日本固有の商習慣への対応強化と販路拡大に向け、国内ベンダーとの協業も強化するという。
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IFSが日本企業向けの販売活動を強化する。日本オフィスを拡大し、今後1年でセールスエンジニアなどの人員を増強する他、新たに国内ERPベンダーのワークスアプリケーションズと戦略的業務提携を締結した。目前に迫る環境規制への対応や「完全標準化と脱アドオン」をキーワードに、日本国内の製造業を中心としたERPのリプレース需要を狙う。
IFSはグローバルで事業活動を行う製造業のユーザーを多く抱えるERPベンダーだ。特に重工業系の業種に強い。
ERPだけでなくフィールドサービス(FSM)や設備資産管理(EAM)、サービスライフサイクル管理(SLM)の機能を単一のアプリケーションに統合している点、AIベースのスケジュールエンジンを搭載している点などが特徴だ。特に直近ではEAM領域のシェアを伸ばしている(ガートナーの調査による2023年EAM市場シェア1位)。製品はオンプレミスの他、クラウド版「IFS Cloud」も提供する。
欧州をルーツとするIFSは、欧州環境規制などのルールに標準で対応し、航空・宇宙、軍事などの産業別の業界ルールに対応した機能も標準で盛り込まれており、カスタマイズなしで利用できる点が強みとなっている。
「単一プラットフォームで各業務を標準化しているため、アップデートなどの問題も1プロダクトで解決する。エンドユーザーにとって『使いやすい』ユーザー体験を重視して開発している。クラウドだけでなく、制約や防衛産業などのクラウドに出せないデータを持つ業界向けにはホステッド型の運用にも対応する」(IFS 最高製品責任者のクリスチャン・ベダーセン氏)
国内では従来、NECがIFSの販売を担っていたが、IFSジャパンのオフィス拡大により両者の連携は「より強固なものになる」(IFSジャパン代表取締役社長の大熊裕幸氏)。
今回、新たに業務提携を発表したワークスアプリケーションズは会計などの業務領域に強く、国内の会計ルールなどへの対応に強みを持つ。
ワークスアプリケーションズ社長の泰氏は「2027年、2030年問題に対する新しい選択肢としての活動を進めている。だがわれわれだけではニーズに対応しきれない。そこでIFSジャパンとの業務提携を進める」と提携の狙いを説明した。
IFSジャパンは、ワークスアプリケーションズとの業務提携と同様に、パートナーエコシステムを強化する方針で、今後、国内SIerやITコンサルティング企業との提携も視野に入れる。ローカライズのための開発体制強化を目的に、日本にもR&D拠点を置く。サポートやカスタマーサクセスの取り組みも強化する計画だ。
IFSのアジア・中東地域担当プレジデントのヴィンセント・カルバーリョ氏は「日本はIFSにとって次の『超成長市場』だ。経済規模が大きく、製造業が占める割合も高い。自動化やイノベーションへの関心も高い。日本市場のニーズを元にわれわれも成長したいと考えている」と日本市場に高い期待を寄せる。
「ワークスアプリケーションズとは同じERPベンダーだが、強みは補完関係にある。両者が提携することで国内法令や商習慣に迅速に対応しながら、グローバルでの固定資産管理などもスムーズ処理できるようになる。グローバルとローカルプレーヤーが協業することはいままで少なかったが、これからは新しい形の業務提携を進めていきたい。環境データ系のパートナーシップも今後拡大していく」(カルバーリョ氏)
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