専門家が予言するERPのトレンド、2024年の3本柱とは(1/2 ページ)

2024年はERP業界にとって重要な1年になる。アナリストはクラウドへの移行や生成AI機能の追加などで戦略的投資先になっていくとみているが、具体的にはどのように進化するのか。

» 2024年02月28日 16時43分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

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 2024年はERPにとって、長年解決できないでいる問題への対処や新たな状況に対応する能力が問われる極めて重要な1年になる。

 ERPはこれまで通りバックオフィスで稼働し続ける。その多くはオンプレミスで運用されているが、クラウドへの移行や生成AI(人工知能)の組み込みといったさまざまな技術との統合が進むことで、バックオフィステクノロジーだったERPが生産性の向上や新たなビジネスモデルの構築に役立つ手段になる可能性がある。

 ERP業界のアナリストやベテランが2024年のERPにおけるトレンドとして挙げるのは「クラウド採用の流れの継続」「生成AI機能の導入」「エンタープライズアプリケーション管理やフィールドサービス管理などのアプリケーションとの統合」だ。

2024年のERPトレンド、その3本柱とは

 クラウドERPへの移行の機運は今後も続くと専門家は見ている。その主な原動力としては、AIをはじめとする最先端の機能を使いたいというニーズと、ビジネスプロセスをモダン化する必要性などがある。

 調査会社Nucleus Researchのリサーチマネジャー、アイザック・グールド氏によると、ERPベンダーも顧客のクラウド移行促進を主要な戦略に据えており、技術開発もクラウドアプリケーションが中心になっているという。

 「Rise with SAP」や「Microsoft AIM」など、一部のベンダーは顧客のクラウド移行促進を目的としたプログラムを導入している。こうしたベンダーは、オンプレミス型の製品を使う顧客のサポートも継続するとしているが、技術開発は明らかにクラウドが中心になっているという。

 「ベンダーはクラウド移行支援サービスの価格を落とし、移行を後押ししている。開発に目を移すと、あらゆるツールがクラウドユーザー限定ツールか、データをクラウドに移行するための技術のいずれかになっている状況だ」(グールド氏)

「クラウド」「生成AI」「統合」が三本柱に

 ERPのシステムインテグーレションおよびサービス提供企業Wiproのアニス・マド氏も、2024年のERPの最大のトレンドはクラウドであり、中規模企業についてはこの傾向が特に顕著になるとみている。

 ERPをクラウドに移行する大きな理由は2つあるとマド氏は解説する。一つはERPシステムのインフラやセキュリティ、開発に対応するスキルセットの確保に関する問題で、オンプレミス環境では人員の確保が次第に難しくなってきている。

 「レガシーなスキルセットは時代遅れとなり、今やコーディングしたいという開発者はいない。また、ネットワークインフラがコモディティ化し、低コストでの確保が可能になっているという事情もある」とマド氏はいう。

 第2の理由は開発サイクルだ。SAPやOracle、Inforをはじめとするベンダーが、クラウド版用の新機能の開発を優先していると同氏は指摘する。レガシー化したERPにしがみつくと、企業はコストの高騰や技術が時代遅れになるリスクを負うことになる。

 とはいえ、マド氏によるとクラウドERPへの移行は依然として容易ではない。レガシー化したオンプレミスシステムを抱える企業は、データの準備を整え、移行に伴う問題を解決する必要があり、既存のカスタマイゼーションについては変換ないし削除を迫られる。

 「しかしそれ以前に、経営陣からどうやって承認を得るかという問題がある。巨額の投資となるがゆえに『問題なく機能しているのになぜ(レガシーシステムに)手をつけるのか?』と経営陣は考える」とマド氏はいう。

 「経営陣に対し、彼らが見えていない視点を示さなければならない。今使っているシステムの問題点を指摘するのではなく、これからの数年間に取り逃がしてしまうものを提示する必要がある」(マド氏)

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