富士通とNECの最新受注状況から探る「今後の国内IT需要の行方とリスク」Weekly Memo(1/2 ページ)

国内IT需要の今後の動きはどうなるか。どんなリスクがあるのか。富士通とNECの最新受注状況から探る。

» 2024年08月05日 16時25分 公開
[松岡功ITmedia]

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 国内IT需要の今後の動きはどうなるか。そこにはどんなリスクがあるのか。国内ITサービス事業大手の富士通とNECが相次いで発表した2024年度(2025年3月期)第1四半期(2024年4〜6月)の決算から受注状況に注目し、見通しを探る。

富士通がリスクに挙げた「人材確保の問題」とは

 富士通が2024年7月25日に発表したITサービス(同社の場合「サービスソリューション」)における第1四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比97%にとどまった。

 業種別では、エンタープライズビジネス(製造業などの産業・流通・小売)が前年同期比106%、ミッションクリティカル他が同131%と伸長した一方、ファイナンスビジネス(金融・保険)は同100%の前年並み、パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)は同85%と減少した(表1)。

表1 富士通の各分野における2024年度第1四半期の国内受注状況(出典:富士通の決算資料)

 この受注状況について、同社 代表取締役副社長 CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏は会見で次のように説明した。

富士通 代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏

 「2023年度(2024年3月期)に獲得した大型受注の反動で、2024年度第1四半期の受注比率は少し減少しているが、デマンドの動きは引き続き力強く、商談パイプラインは着実に積み上がってきている」

 業種別には、「前年同期比106%となったエンタープライズビジネスは、DX(デジタルトランスフォーメーション)やSX(サステナビリティトランスフォーメーション)関連、基幹システムのモダナイゼーション案件などが継続して拡大し、幅広い範囲で活況が続いている。ファイナンスビジネスは、金融機関向けの基幹システムの大型更新商談を獲得でき、高水準だった前年同期並みの規模を確保できた。パブリック&ヘルスケアは、前年同期に大型案件を受注した反動で同85%となった。すでに第2四半期以降の商談パイプラインが積み上がってきており、懸念はない。同131%となったミッションクリティカル領域では、基幹システムの更改などで複数年の大型商談を獲得した」と説明した。

 今後の需要については、「第2四半期以降は、受注の数字も高水準に戻ると見ている。力強いデマンドを感じている」とのこと。「力強い動きの中で、今後の受注にマイナスの影響を与えるリスクをどう見ているか」と質疑応答で聞いたところ、磯部氏は次のように答えた。

 「リスクになり得るのは、今後、生産性をさらに上げるための人材をどう確保するかだ。技術が変化し、自社の事業ポートフォリオも変わってきた中で、その変化に応じた人材のポートフォリオをどう形作るのか。例えば、当社がサービスとして提供する『SAP』や『ServiceNow』、『Salesforce』に精通した人材をもっと拡充しなければならない。一方で、モダナイゼーションに対応するためには、新しい技術よりも過去の技術スキルを持つ人材が不可欠だ。足らないならば、改めて育成する必要がある。デマンドが強いながらも技術が大きく変化している中で、それに対応できる人材を確保することは大変難しいと感じている」

 その上で、同氏は次のように述べた。

 「単に人を増やせばいいという話ではなく、自社の事業ポートフォリオに沿った形で人材のポートフォリオを構成させていかなければならない。そのためには、処遇面についてもしっかりと報いるような状態をつくらないと、人のモチベーションは上がらないだろう。こうした悩みは当社に限らず、多くの企業が抱えているのではないか。今後は人材確保とともに、AIを活用した自動化も積極的に進める必要があるが、そうした仕組みを作り上げるための人材も引く手あまただ。人材の話を『リスク』と表現していいのかどうか少々疑問も感じるが、この問題を乗り越えられなければ、どれほどデマンドが強くてもそれに応えられなくなるという意味で、大きなリスクだと考えている」

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