NECの戦略から考察 DXを成功に導く「シナリオ作り」の勘所とは?Weekly Memo(1/2 ページ)

DXに着手する企業は多いが、期待するほどの効果が出ていないのはなぜなのか。「DXを成功に導くシナリオをどう作るか」を焦点にしたNECのソリューションに着目し、考察する。

» 2024年07月29日 18時10分 公開
[松岡功ITmedia]

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 企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)をうまく進めるためには、目指す姿を描き、それに向けてDXを進めるための「シナリオ作り」が不可欠だ。そうしたアプローチは従来のデジタル化でも重視されてきたが、DXは最終的に自社がデジタル企業に変わるために、DX支援ベンダーなどから知恵を借りながらも将来を見据えてしっかりと取り組む必要がある。

 そのシナリオ作りに必要な「知恵」はどうあるべきか。NECはDX支援ベンダーとしてソリューションの整備に注力している。今回はその内容に注目し、DXのシナリオ作りのあるべき姿を考察する。

NECのDX事業戦略の要となる「Scenario」(シナリオ)とは

 NECからシナリオ作りの話を聞いたのは、同社が2024年7月25日に開催した「DXの動向とBluStellar(ブルーステラ)による価値提供」と題した記者およびアナリスト向けの説明会だ。同社 BluStellar事業推進部門シニアディレクターの岡田 勲氏が説明した。

NEC BluStellar事業推進部門シニアディレクターの岡田 勲氏 NEC BluStellar事業推進部門シニアディレクターの岡田 勲氏

 「BluStellar」は、NECが2024年5月30日に発表したDX事業ブランドだ。同日開催された記者会見では同社 社長兼CEOの森田隆之氏が説明役を担い、新ブランドとして大々的に打ち出した。その会見の様子やBluStellarの概要については、2024年6月3日掲載の本連載記事「NECの取り組みから探る『ユーザー企業がDXを成功に導く3つの要件』」(注)をご覧いただくとして、今回はその流れを汲んだ2024年7月25日の説明会で聞いたBluStellarの中の「Scenario」と呼ぶソリューションに着目した。以下、岡田氏の説明を基にScenarioについて紹介する。

 BluStellarは、顧客企業のDX実現に向けた構想を描く「アジェンダ」、それを実現するためのオファリングや商材を意味する「テクノロジー」、人材育成などの取り組みを指す「プログラム」といった3つのソリューション領域から構成されている(図1)。

図1 3つのソリューション領域で構成されているBluStellar(出典:NECの説明会資料) 図1 3つのソリューション領域で構成されているBluStellar(出典:NECの説明会資料)

 Scenarioはアジェンダの領域を担うもので、「お客さまが抱える課題を解決するための価値創造シナリオ」だと言う。岡田氏によると、「Scenarioはアジェンダに対して目指すべきゴールを想定し、それに向かってNECが提供するコンサルティングや製品・サービス、オファリング、インテグレーションを組み合わせてお客さまの価値を創出できるように『型化』したもの」とのことだ。この後、同氏はScenarioについて「型化」という言葉を幾度も使っていた。筆者はこれを「ベストプラクティス」(最良の事例)と受け止めた(図2)。

図2 Scenarioの概要(出典:NECの説明会資料) 図2 Scenarioの概要(出典:NECの説明会資料)

 肝心なのは、Scenarioのメリットだ。岡田氏は「お客さま視点でのScenarioのメリット」として次の3つを挙げた。

  1. 経営課題に対する戦略的集中と事業成長: 経営課題に対して目指すべき姿と具体的な課題解決策のロードマップが明確となり、戦略的なリソースの集中と事業成長が可能になる
  2. 事業拡大・競争力強化: 実績のあるシナリオを基に事業環境や市場動向の変化のスピードに対応しながら課題解決に取り組めることで、事業拡大・競争力強化につながる
  3. 実績とノウハウを持つパートナーのサポート: コンサルティングや製品・サービス、システム構築・運用の実績とノウハウを持ち、戦略立案から実行まで責任の持てるパートナーのサポートがあることで、安心して課題解決や事業拡大に取り組むことが可能になる
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