成果が出ている企業は6割止まり IPA調査で判明、停滞する日本のDX

IPAの2024年調査によると、日本企業のDXによる成果創出は米国企業に比べて遅れが目立つ。調査結果から浮かび上がった「日本企業が特に成果を挙げていないDXの取り組み項目」とは。

» 2024年06月28日 07時00分 公開
[田中広美ITmedia]

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 情報処理推進機構(IPA)は2024年6月27日、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み状況とその成果、技術利用、人材育成についての調査結果をまとめた「DX動向2024」を発表した。

「成果が出ている」企業はたったの64.3% 日本が直面する「壁」

 同調査は戦略や技術、人材の3つの視点からDXの取り組みとその成果を分析している。「DX動向2024」によると、DXに取り組む日本企業の割合は年々増加している。日本企業でDXに取り組む割合は増えている一方で、成果創出に至らない企業が多いのはなぜなのか。

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2021年度の調査で「DXに取り組んでいる」と回答した企業の割合は55.8%だったが、2023年度に同様の回答をした企業は73.7%に上った。

図1 DXに取り組む企業の割合の推移(出典:IPAのプレスリリース) 図1 DXに取り組む企業の割合の推移(出典:IPAのプレスリリース)

 一方で、DXによる成果創出が思い通りに進まない日本企業の現状も明らかになった。2023年度の調査で、「成果が出ている」と答えた日本の企業の割合は64.3%にとどまった。

図2 日本企業と米国企業のDXによる成果創出の比較(出典:IPAのプレスリリース) 図2 日本企業と米国企業のDXによる成果創出の比較(出典:IPAのプレスリリース)

 2023年度の調査で、「成果が出ている」と答えた米国企業の割合は90%にも上った。日本企業でDXに取り組む割合が米国企業並みに増えている一方で、成果創出に至っていない企業が多いことが分かる。

取り組み項目別の成果は「変化なし」

 IPAはDXの取り組み項目を「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」の3段階に分けている。最も初期の段階であるデジタイゼーションや、中期の段階であるデジタライゼーションでは、「アナログや物理データのデジタル化」や「業務の効率化による生産性の向上」など取り組みやすく成果が出やすい項目が並ぶ。

図3 DXの取り組み項目別の成果(出典:IPAのプレスリリース) 図3 DXの取り組み項目別の成果(出典:IPAのプレスリリース)

 最も進んだ段階であるデジタルトランスフォーメーションでは「新規製品・サービスの創出」「組織横断、全体の業務・製造プロセスのデジタル化」「企業文化や組織マインドの根本的な変革」といった項目が並ぶ。

 この中で日本企業が「既に十分な成果が出ている」と回答した割合が最も少なかった項目が、「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」だった。

 同調査から、DXの推進に取り組む日本企業は増えているものの、成果創出については米国企業に比べて遅れがあるという現状が浮かび上がった。

 IPAは、日本企業におけるDXの推進について、「各段階における具体的な取り組み項目別の成果については、その割合に大きな変化は見られなかった」としつつ、「デジタルトランスフォーメーション段階での成果は他の段階に比べて道半ばであることが分かった」と分析する。

 「DX動向2024」の基となった調査は事業会社の人事部門や情報システム部門、DX推進部門などを対象として2024年2月9日〜5月2日に実施され、1013社から有効回答を得た。IPAは「DX動向2024」について、2021年と2023年にIPAが公表した「DX白書」から引き継いだ調査の結果を速やかに公表し、「DX白書」の調査結果と経年変化を含めて分析するものとしている。

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