これまで多くの企業が生成AIに「生産性向上」を期待して導入してきたが、ある調査によると、最近は変わりつつあるという。企業が生産性向上よりも重視する項目とは?
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世界4大会計事務所のKPMG International(以下、KPMG)が、米国を拠点とする年商10億ドル以上の企業の経営幹部、およびビジネスリーダー100人を対象として2024年6月に実施した調査によると、回答者の半数強が生成AIへの投資の成否を判断する基準として「ある項目」を挙げた。
2024年7月10日(現地時間、以下同)に発表されたこの調査レポートにより、生成AIに対する経営幹部の投資対効果の指標が急速に変化していることが浮かび上がった。かつて最重視されていた「生産性」を上回る最優先事項とは。
KPMGは、「生成AI戦略は新たな転換点を迎えている」とプレスリリースで述べる(注1)。
「2024年も折り返しを迎え、経営幹部とビジネスリーダーはもはや技術に投資するだけでなく、新たな収益源を開拓し、ROIを最大化し、競争優位性を強化するために生成AIを積極的に拡大しようとしている」 (KPMG)
CFO(最高財務責任者)や他の経営幹部は、今後数年で米国経済を押し上げると予想されるAI分野の急速な進歩に追い付こうと奮闘している。コンサルティング大手のMcKinseyによると、特に生成AIは、2030年までにほぼ全ての職種において最大70%のビジネス活動の自動化を可能にし、世界経済に数兆ドルの付加価値を生む可能性がある(注2)。
2024年7月9日に発表された調査会社のGartnerの調査結果によると、CFOの62%およびCEOの58%が、「今後3年間でAIが各業界に最も大きな影響を及ぼす」と考えていることが明らかになった。
「AIは業界を変革する大きな可能性を秘めているが、3年という期間はそのためには短すぎる」と、Gartnerのアレクサンダー・バント氏(財務部門リサーチ責任者)はプレスリリースで述べた(注3)。
「シニアエグゼクティブ(上級執行役員)は期待値を管理し、直面する組織的な課題を十分に認識する必要がある」(バント氏)
KPMGの調査では、ビジネスリーダーの80%が「生成AIへの投資は競争上の優位性を獲得し、市場シェアを高めるための鍵となると考えている」と回答している。
KPMGのスティーブ・チェイス氏(AI・デジタルイノベーション担当バイスプレジデント)は「企業のリーダーは、生成AIへの投資と採用を基本条件として捉え始めている」と2024年7月10日に発表したプレスリリースで述べた。
調査によると、組織が生成AI投資から具体的な財務的成果を示そうとする中、主要なROI(投資収益率)指標として回答者の52%が「収益創出」を選択し、44%が「意思決定の改善」、40%が「生産性」を選択した。KPMGによると、2024年第1四半期に実施した調査では生成AIの成功指標として「生産性」が回答者の51%から支持を受けて首位に立っていた。今回の調査は、経営幹部の意識の変化を示している。
同調査では、生成AIへの投資が急速に拡大する中、技術専門職の採用に重点を置く割合が、前四半期比で26%から60%に2倍以上増加したことも明らかになった。企業は既存の従業員のスキルアップにも積極的に投資しており、トレーニングや能力開発の取り組みを重視する割合は35%から59%に急増している。
「企業は人材が生成AI成功の要であることを認識している。しかし、それは現場だけの問題ではない。リーダーも自ら生成AIに積極的に取り組んでいる。この実践的なアプローチは、エグゼクティブ向けの生成AIトレーニングから、企業の取締役会におけるAIスキルの需要の高まりにまで見られる」(チェイス氏)
(注1)KPMG LLP AI & Digital Innovation Quarter Pulse Survey: the path to sustainable returns(KPMG)
(注2)The organization of the future: Enabled by gen AI, driven by people(McKinsey & Company)
(注3)Gartner Survey Reveals CFOs and CEOs Identify AI as the Technology with the Greatest Impact in the Next Three Years(Gartner)
(初出)GenAI spending frenzy shifts as revenue emerges as top ROI priority
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