製造業のデジタル投資は2025年も増加傾向 成果が出ずらい業種は?

製造業のデジタル化に関する投資の増加は、2025年にも続くと予想されているが、一部の企業がトレンドに反する動きをする分野もある。成果を出すのに苦労する業種はなんだろうか。

» 2025年02月13日 07時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

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 製造業のデジタル化に関する投資の増加は、2025年にも続くと予想されているが、一部の企業がトレンドに反する動きをする分野もある。

 調査企業であるForrester Researchのレポート「2025 Predictions: Smart Manufacturing and Mobility(2025年の予測:スマートマニュファクチャリングとモビリティ)では、製造業者が引き続き投資をすると考えられる4つの分野と、現在の投資の取り組みが変化する可能性がある分野も予想されている。

製造業のデジタル投資トレンドに逆行する企業の真意は?

 Forrester Researchのアナリストでありレポートの共著者であるポール・ミラー氏は、「デジタル技術を物理的な資産やプロセスに接続するという主要なトレンドは続くものの、一部の分野で企業は課題に直面している」と話す。

 デジタル化が製造業に多くの機会と可能性をもたらすという認識は確かに存在している。しかし、物理的な手段で業務をしてきた従来のベンダーは業務にデジタルを深く組み込むことに苦労している。

 ミラー氏は「多くの製造業者は、物理的な製品製造および製品販売から、デジタル技術を活用したサービス開発への移行について話したり計画を立てたりしているが、これを実現するのは困難であり、大きな変革を必要とする」と述べた。

 「デジタル化を進める組織の多くが、想像以上の難しさに気付いて後退する様を私たちは見てきた。まだやるべきことが残されており、組織の前進は緩やかだ」(ミラー氏)

製造業のデジタル化に関する2025年の4つのトレンド

 Forresterのレポートは、製造業のデジタル化に影響を与える2025年の4つのトレンドに言及している。

 はじめに、欧州における大規模なラストワンマイルサービスおよび配送バンの25%が電気自動車(EV)に移行するという予測がなされている。ミラー氏は「これは、乗用車の分野でEVの販売が減速しているという現状に逆行する動きだ」と述べた。

 「大規模な車両群を用意することで、拠点に充電用のインフラを整備できるようになり、それらの車両が日々の走行におけるコストを削減できる」(ミラー氏)

 一方、レポートでは、製造業者の50%が運用およびプロセスの電動化計画を遅らせると予測している。ミラー氏は「燃料を節約し、環境に配慮するために製造業者は電動化に関心を持っているが、先進国の市場における送電網は、現在追加の需要を処理する容量を持っていない」と述べた。

 「これらの送電網において、より多くの容量を確保し、双方向型の送電に対応するための取り組みがなされているが、投資の進行はかなり遅い」(ミラー氏)

 製造業へのヒューマノイドロボットの導入に多くの注目が集まっているが、レポートは、製造業用のロボットで人間の形をしたものは5%未満だと予測している。ミラー氏は「これは、ヒューマノイドロボットの活用に最も適したユースケースが十分に理解されておらず、大規模に展開されていないためだ」と説明した。

 「現在の自動化のユースケースの大半は、特定のタスクに特化しており、機械を中心に設計されている。このような場合、ヒューマノイドの形状が最適とは限らない。重心が低く固定されていたり、レールの上を移動したりするようなものが望ましい。それにより、高い安定性と強度が実現されコスト効率も向上するためだ」(ミラー氏)

 最後に、Forrester Researchは、大手自動車メーカーがデジタル開発チームを大幅に削減すると予測している。全ての自動車メーカーは、ソフトウェアで定義された自動車を構築し、顧客との関係を維持するためにデジタルサービスに投資してきたが、ミラー氏によると、これらの投資はまだ利益を生んでいないという。例えば、Volkswagenが設立したソフトウェア開発企業であるCariadや、TOYOTAの開発企業であるWovenは赤字を出している。

 デジタル化は理にかなっているが、従来の自動車メーカーは説得力のある構想を十分に実現できていない。今後1年ほどの間に投資内容の見直しが進み、パートナーを増やしたり、具体的な価値を提供できる分野に注力したりする動きが見られるだろう」(ミラー氏)

緩やかで着実な進展

 製造実行システムソフトウェアを提供するParsec Automation Corpが発表した最新のレポート「2024 State of Manufacturing Survey: North America(2024年版 製造業の現状調査:北米)」によると、製造業のデジタルトランスフォーメーションは進行中で完了には至っていないという。

 この2回目となる年次調査では、現場作業者から経営幹部までの製造業関係者を対象に、現在直面している課題や戦略の策定状況に関する質問がなされた。

 レポートによると製造業のデジタル化は課題に直面している。それは、ワークフローを再設計する必要があるだけでなく、データ重視の思考に対応し、AIをはじめとする新しいツールを使いこなせるよう従業員を育成する必要があるためだ。

 デジタル化の取り組みの進捗(しんちょく)状況は企業ごとに異なる。回答者の32%は「完了した」と報告し、18%は「導入がかなり進んでいる」と報告しており、約半数は一定の成果を上げているようだ。一方、32%は「導入の初期段階」にあり、15%は「計画段階」で、3%は「選択肢を調査中」と報告している。

 製造業のデジタル化においてAIは最も注目される技術の一つだ。レポートによると、製造業におけるAIへの関心は高まっているが導入はまだ広範囲に及んでいない。

 製造業向けのソフトウェアを開発提供するParsecのエディ・アザド氏(CEO)は、次のように述べた。

 「CEOおよびCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)はAIの導入について熱心に語っており、製造業はAIに高い関心を持っている。しかし、導入を実行に移すところには至っておらず、多くの製造業においてAIを有効活用する体制が整っていない」(アザド氏)

 過去2年間、AIに関する議論の多くを支配してきた生成AIは、製造業のニーズには適していないと彼は述べた。生成AIはコンテンツ作成関連のプロセスには不可欠だ。しかし、製造業にはAIのデータ分析と予測的使用のほうが適している。

 「多くの企業がミッションに特化したアルゴリズムを開発し、何が起こるかを予測するためにパターン認識に注目している。また、AIエージェントを業務に特化して訓練できるようにする動きもある」(アザド氏)

 調査回答者のほぼ半数(47%)が、AI実装の最大の課題として「技術的な準備」を挙げ、次いで「データのアクセス性と品質」(44%)が続いた。ただし調査では、課題や懸念があるにもかかわらず、ほとんどのメーカーがAIの導入準備が整っているか、その段階に近づいていることが示された。回答者の大多数(65%)は、「AIを導入して効果的に使用する準備がある程度整っている」と答え、さらに15%は「非常に準備ができている」と回答している。

 アザド氏は、メーカーがAIを最大限に活用するためには、AIの使い方や使用目的についてユーザーを教育する必要があると述べた。

 「生産現場は、生産量への影響や守るべきスケジュール、達成すべき品質基準、直面している問題などを常に考えている。『ChatGPT』のように、AIに対して漠然とした質問をするわけではない」(アザド氏)

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