ロレアルとIBMがAI開発で提携 ビジネスを犠牲にしないSDGsは可能か?CIO Dive

AIの活用は事業の成長を促す一方で、電力の大量消費をはじめとする環境への負荷が懸念されている。ロレアルとIBMが共同で開発するAIモデルは、事業成長と環境への配慮の両立させられるのか。

» 2025年02月26日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 化粧品や日用品の製造メーカー大手L'Orealは、IBMと協力して持続可能性の目標を達成するためのAIモデルを設計していると、2025年1月15日(現地時間、以下同)に発表した(注1)。

ビジネスを犠牲にしないSDGsは可能か?

 L'Orealのマチュー・カシエ氏(研究開発部門最高変革・デジタル責任者)は「今回のIBMとの大規模な提携により、長年培ってきた独自のビューティーサイエンスの専門知識とデータ構造化を基盤として、当社のイノベーションと開発プロセスに新たな刺激的な時代が幕を開ける」と述べた。

 両社が開発しているAIモデルのポイントは何か。

 両社は開発中のAIモデルを使って既存製品の配合を見直し、再生可能な成分を配合プロセスに取り入れた持続可能な製品ラインを開発するという。

 2024年、L'OrealはAIとデータサイエンスに注力し始めた(注2)。同社はAIがワークフローに浸透するに伴って、成長を推進する上で重要な役割を果たすことを望んでいる。

 また、SDGsの達成も優先事項として挙げている。

 生成AIの活用が環境に影響をもたらす一方で、ビジネスリーダーは生成AIが持続可能な開発に貢献することを期待している(注3)。AIを駆使してデータセンターで利用する電力の脱炭素化を図るツールやESG(Environment、Social、Governance)を分析するツール、SDGsの達成状況をモニタリングするツールを提供しているベンダーもある(注4)(注5)(注6)。

 しかし、AIにはSDGs達成に関する潜在的な利点があるとしても、その進展を妨げる可能性も否めない。

 Googleは2024年7月に発表した年次環境報告書の中で、AI活用に伴う高い計算負荷と技術インフラへの投資が原因でCO2排出量の削減に苦戦していると述べた(注7)。

 Gartnerのボブ・ジョンソン氏(バイスプレジデントアナリスト)は、2024年11月の声明で次のように指摘している(注8)。

 「現実として、データセンターの利用増加に伴って電力消費量も増える。短期的にはCO2排出量は増加するだろう。これによって、データセンターを運営する事業者やその顧客はCO2排出に関連するSDGsを達成することが一層困難になる」(ジョンソン氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

あなたにおすすめの記事PR