サステナビリティは「ビジネス」になり得るのか――富士通の活動から探るWeekly Memo(1/2 ページ)

「サステナビリティ」が社会課題への取り組みとして注目されている。だが、企業にとってはビジネスにできなければ続けられない。果たして、サステナビリティはビジネスになり得るのか。富士通の活動から探りたい。

» 2022年10月11日 12時30分 公開
[松岡功ITmedia]

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 「これからは成長と持続可能性を両立させていくことが肝要だ」

 2022年9月22日(現地時間)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で講演した岸田文雄首相は自らの経済政策「新しい資本主義」の最大のポイントについてこう強調した。「持続可能性」とは、今やバズワードとなっている「サステナビリティ」のことだ。ただ、サステナビリティも経済成長と両立させなければ、それこそ「持続しない」と首相は述べる。

 「サステナビリティはビジネスになり得るのか」――サステナビリティに関する取材を重ねるうちに、この疑問が大きく膨らんだ。もちろん行き着く先は地球と人類の存亡に関わる話なので、最重要の社会課題であることは間違いない。だが、企業にとってはビジネスにできなければ継続的な活動は難しい。社会課題という名目だけでは、ビジネスとして継続できる保証はない。上記の首相の発言を取り上げたのは、そんな疑問を端的に表していると感じたからだ。

富士通が「ビジネスを通じたSXの実現」を強調

 あたらめて、サステナビリティとは環境や社会、経済など多岐にわたる持続可能性のことだ。企業にとっては、サステナビリティに関わる取り組みを経営の中心に据えることが、社会的責任を果たし、ブランド価値向上にもつながるという考え方だ。

 サステナビリティが注目される背景には、国連をはじめとした世界的な取り決めとして、「SDGs」(持続可能な開発目標)の達成が2030年まで、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を2050年までとする期限があり、これに向けて積極的に取り組みを進める企業の評価が高まっている。そして、こうした企業の取り組みをDX(デジタルトランスフォーメーション)によって支援しようというITベンダーの動きも活発化している。問題は、そうした取り組みを企業がビジネスとして継続させ、成長に結び付けられるかどうかだ。

 そんな折り、富士通は2022年10月4日、持続可能な変革を意味する「SX」(サステナビリティトランスフォーメーション)をテーマとして自社イベント「Fujitsu ActivateNow 2022」をオンラインで開催し、「ビジネスを通じたSXの実現」を強調した。同社の活動から、サステナビリティがビジネスになり得るのかを探りたい。

 同イベントの基調講演で富士通の時田隆仁社長は、「当社が世界9カ国のビジネスリーダー1800人を対象として2022年2月に実施した調査結果によると、60%が2年前と比べて、SXへの優先度が高まったと回答した」と紹介した。そうした中で富士通のSXへの取り組み姿勢について次のように語った。

富士通の時田隆仁社長

 「当社も『イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界を持続可能にしていく』というパーパス(存在意義)のもと、サステナブルな世界の実現に向けて主体的に貢献するために動き出している。今、私たち企業に求められているのは、自社の活動そのものを環境や社会、経済により良いインパクトを与えるものへ変革していくこと。つまりビジネスを通じたSXの実現だ」

 その上で同氏は「その実現には、デジタルイノベーションが大きな役割を果たすと確信している」と述べ、同社が提供する「Fujitsu Uvance」について次のように説明した。

 「Fujitsu Uvanceは2030年の社会のあるべき姿を起点に、その実現に向けて起こり得る社会課題を皆さまとともにクロスインダストリーで解決するための取り組みだ。誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな世界をつくるというビジョンのもと、社会課題を解決する4分野のインダストリー、それを支える3分野のテクノロジー基盤、合わせて7つの分野で構成されている。Fujitsu Uvanceを通じて、業種の垣根を超えて企業をつなぎ、それぞれの強みを大きな力に変え、地球や社会をより良いものにしていく。これが、富士通が目指すSXだ」(図1)

図1 Fujitsu Uvanceを構成する7つの注力分野(出典:富士通の発表資料)
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