冨安氏は図3を示しながら、今回の取り組みの背景に、NTTデータグループがこれまで培ってきたOSS活用を支える体制や、KVMを活用してきた経験値を強調した。
OSS活用を支える体制としては、2004年にOSS専門組織を設置し、多様なシステムでの導入やOSSの開発およびサポートを継続している。これまでに1000システムを超えるOSSの採用実績があるという。
また、KVMを活用した案件実績では「JA業態の中継系システム」などがある。現在メイフレームを使用している銀行勘定系システムをオープン化する「統合バンキングクラウド」を開発中とのことだ。
こうした背景から、同社は今回、Prossione Virtualizationを発表した。その内容について、同氏は次のように説明した(図4)。
「KVMは、大きなシステムの仮想化基盤として管理機能が不足している。それをカバーするために当社で開発した『Prossione Virtualization Manager』をまず提供する。これにより、従来のVMwareの管理機能レベルにかなり肉薄する形で、安心かつ安全に運用できるようになると考えている。管理に関わるナレッジやドキュメント、プロダクトサポート、さらにはシステムインテグレーションやトレーニングも提供する」
Prossione Virtualizationの詳しい内容については、発表資料をご覧いただきたい。
冨安氏は上記のように説明した後、同社の思惑について次のように述べた。
「当社が手掛けている近く更改予定のVMware関連システムの案件を見ると、(VMware製品のライセンス形態において柔軟な対応も見受けられることから)4分の3は当面VMwareを使い続け、4分の1は他の何かに乗り換ようとしている。乗り換えようとしているお客さまは今後も同じシステムを長く使いたいとの要望があり、仮想化基盤におけるライセンス形態やバージョンアップのポリシーの変更などによる混乱に巻き込まれたくないとの思いが強い。新サービスはそうしたニーズに対応したもので、当面VMwareを使い続ける4分の3のお客さまも今後、対象になると見込んでいる」
上記の話は、同社の思惑であるとともに、VMwareに関する最もホットな動きといえるだろう。
ただ、VMwareの乗り換えについては、これを機にクラウドへ移行する選択もある。筆者も将来を見据えれば、その方向へ動いた方がいいのではないかと考える。しかし、濱野氏によると、そうでもないようだ。
「クラウドへ移行する選択ももちろんあるが、大事なシステムやデータを手元に置いて主権や信頼性から自分たちで責任を持って運用したいというニーズは根強い。クラウドだけでなくオンプレミスも選択肢になる。まずはそうしたお客さまのニーズに応えるのが当社の役目だと考えている」
最後に、気になる予測レポートを紹介しておこう。ガートナージャパン(以下、ガートナー)によると、「2026年末までに、日本企業の半数は、従来型の仮想化基盤の近代化に失敗する」とのことだ。詳しくはガートナーの発表資料をご覧いただくとして、この予測は現実に照らし合わせた上での「強い警鐘」と受け取るべきだろう。
NTTデータグループが打ち出した新施策が奏功するか、注目していきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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