VMware製品のライセンス体系の変更により、仮想化基盤市場が揺れている。NTTデータグループが代替製品による対応策を打ち出した思惑とは。
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企業のITシステムにおける仮想化基盤が見直しを迫られている。仮想化基盤ソフトウェアとして多く使われているVMware製品が、2023年11月のBroadcomによるVMware買収に伴ってライセンス形態が変更されたからだ。
こうした動きを受け、NTTデータグループではVMwareの代替製品としてオープンソースソフトウェア(以下、OSS)の「KVM」(Kernel-based Virtual Machine)を利用した仮想化基盤を管理するサービス「Prossione Virtualization」(プロッシオーネ・バーチャライゼーション)を2025年7月から提供開始すると発表した。
同社が2025年3月12日に開いた記者会見では、NTTデータの冨安 寛氏(取締役常務執行役員テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野担当)と、NTTデータグループの濱野 賢一朗氏(技術革新統括本部プリンシパル・エンジニアリングマネージャー)が説明した。仮想化基盤を巡る動きの背景や同社が新サービスを提供する思惑についての話が興味深かったので紹介しつつ、クラウド移行と比べた場合のユーザー企業にとってのメリットについて考察したい。
(編注)NTTデータグループの濱野 賢一朗氏(技術革新統括本部プリンシパル・エンジニアリングマネージャー)の氏名について、当初「濱野 賢一氏」と誤表記していたため、修正の上更新しました(2025年3月25日11時42分更新)。
「当社は日本の官公庁や金融機関のシステムを多く手掛け、日本人の手でシステムを構築して運用することに長年にわたって骨を砕いてきた。そこで非常に大事なのは『主権』(ソブリン)だ。いかにデータや運用の主権を持ってシステムを使い続けられるかが大事なポイントだと考えている」
こう話した冨安氏は、次のように説明した(図1)。
「当社は主権を確保したシステム基盤として、『OpenCanvas』というパブリッククラウドサービスを提供している。それに加えて今回、VMwareの動きを受けてオンプレミスの仮想化基盤にも乗り出すことにした。現在、仮想化基盤市場は米国製のVMware製品が97%のシェアを占めており、日本企業としてはこの機に主権を取り戻すべきだと考える向きも多い。そうしたニーズに応えるべく、VMwareの代替製品としてOSS(Open Source Software)のKVMを適用したサービスを提供することにした」
なぜ、KVMなのか。同氏は次のように述べた(図2)。
「仮想化基盤として現状ではほとんどVMware製品が使われているが、一方で、その上で使うWebサーバやAP(アプリケーション)サーバ、DB(データベース)サーバの仮想マシンにはそれぞれOSSがかなり浸透している。OSSはソフトウェアのコードをわれわれも見られるので、その意味では主権を保持できる。従って、仮想化基盤もOSSにしようというのが当社の提案だ。KVMは「Linux」が内包するツールとして以前からあったが、信頼性の観点からあまり使われることなく、仮想化基盤市場はVMwareが独占してきた。そんなKVMに改めて光を当てて、当社として主権と信頼性を担保していこうというのが、今回の発表の主旨だ」
図2とその内容の説明については、この分野を知るエンジニアにとっては周知のことだろうが、VMwareを巡る動きのポイントでもあるので、理解がもっと広がることを期待したい。
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