マルチベンダーの「AIエージェント」を連携してオーケストレーションできるか。オーケストレーションプラットフォームの主導権争いはどうなるのか。この点について優位な立ち位置にいると思われるServiceNowの戦略から考察する。
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マルチベンダーの「AIエージェント」を連携してオーケストレーションすることは可能か――。これまで人間がやってきた業務を代行するAIエージェントがITベンダー各社から続々と提供される中、ユーザー企業にとって今後懸念されるのがこの点だ。
本連載ではこれまでもテーマについて重点的に取り上げてきたが、今回はこの懸念の解消に向けて優位な立ち位置にいると思われるServiceNowの話を聞いたので、紹介して考察する。
「当社が提供する『Now Platform』は、デジタルワークフローからAIのプラットフォームに進化していく」
ServiceNow Japanの鈴木正敏氏(執行役員社長)は、同社が2025年4月2日に開いた事業戦略についての記者説明会でこう強調した。会見では、同社の原 智宏氏 常務執行役員 COO《最高執行責任者》)も登壇し、「Now Platform」の最新動向について説明した。会見内容は関連記事で確認いただくとして、本稿では冒頭で述べたテーマにフォーカスする。
鈴木氏は、IT活用の歴史から見るAI時代の企業のITについて次のように説明した(図1)。
「1990年代から業務領域ごとにシステムが導入され、2000年代には統合基幹業務システム(ERP)が使われるようになって、経営の『見える化』や業務の標準化が図られた。その後、営業や人事などの業務のIT化ニーズも強まり、2010年頃からクラウドの活用も進んだ。しかし、そうして企業内で使う業務アプリケーションが、大手企業では数百にも膨らんでしまい、しかもそれらの連携が不十分なので、使う人が振り回される事態に陥るところが続出した。そうした背景から時代の要請を受けて、特に2020年頃からそれらの業務アプリケーションをデジタルワークフローでつないで仕事をスムーズに進められるようにしたNow Platformの採用が急速に広がった」
さらに、こう続けた。
「2020年までは“経営基盤の強化”がシステム導入の目的だったが、2020年以降は“従業員やお客さま体験の向上”にも注力されるようになった。そしてこれからは、生成AIおよびAIエージェントが業務の隅々に入り込む“AIブレークスルー”の時代に入る。Now PlatformはそのAIプラットフォームを担いたい」
その上で、同氏は「経営基盤の強化と従業員やお客さま体験の向上にAIを組み合わせる。すなわちデータや業務プロセス、AIを単一のプラットフォームでカバーする。それが、次世代のAIプラットフォームのあるべき姿だと確信している」と力を込めた(図2)。
改めて、Now Platformの特徴として挙げたいのは、ServiceNowだけでなく他社のさまざまな業務アプリケーションと連携させて、社内の業務システムとして横断的なデジタルワークフローを構築できることだ。デジタルワークフローで横串を刺すこの仕組みが、業務を自動化し、新たなサービスを創出するプラットフォームとして機能するわけだ。さらに生成AIとして「Now Assist」、AIエージェントとして「ServiceNow AI Agents」をNow Platformから利用できるようにして、業務の生産性を大幅に向上させる構えだ。
とりわけ業務を代行するAIエージェントにとって、デジタルワークフローは活躍の場そのものになる可能性が高い。冒頭で同社を「優位な立ち位置にいると思われる」と述べたのは、それが理由である。
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