今回、Now Platformの最新版ではAIエージェントが本格的に使えるようになった。原氏はその動作について、図3を示しながら次のように説明した。
「当社では業務をリクエストするユーザーを『リクエスター』を呼ぶ。このリクエスターが何らかの業務をリクエストすると、ワークフローが動き出す。従来は人がそのリクエストを受け取って各業務へと振り分けていたが、これからはその役目を『AI Agentオーケストレーター』と呼ぶAIエージェントが担う。AI Agentオーケストレーターはリクエスターに対する窓口にとどまらず、実行計画を立てて業務ごとのAI Agentを指揮して各ユースケースに対応する重要な役目を担う。一方で、AI Agentオーケストレーターが誤った判断や暴走をしないように、人であるライブエージェントが適切にチェックしながら業務を推進していく。こういった流れを実現したい」
ここで出てきた「AI Agentオーケストレーター」がミソだ。本稿のテーマからすると、要はこのAI AgentオーケストレーターがServiceNowだけでなく、他社のさまざまな業務アプリケーションのAIエージェントともオーケストレーションできるようになるのかどうかが気になる。
会見の質疑応答で聞いてみたところ、鈴木氏と原氏はそれぞれ次のように答えた。
「当社のデジタルワークフローのプラットフォームは、さまざまなベンダーのAIエージェントを連携してオーケストレーションする環境としても適しており、お客さまの多様なニーズにお応えできると確信している」(鈴木氏)
「技術的な観点で言うと、マルチベンダーによるAIエージェント間の接続についてはさまざまに検証されつつあるが、標準的な仕様はまだ業界として確立しておらず、どういう形になるか見えていない状況だ。従って当社としては今後、個別に接続性を検証してNow Platformでオーケストレーションできる他社のAIエージェントを認定する形を当面はとる。その内容についてはいずれ発表したい」(原氏)
原氏が言うように、IT業界として標準的な仕様が策定されるのかどうかは今のところ見通せないが、マルチベンダーのAIエージェントのオーケストレーションプラットフォームについては有力な業務アプリケーションベンダーやハイパースケーラー、大手ITサービスベンダーがこぞって主導権争いに参入するだろう。
そして、大手同士では相互のプラットフォームで動作する「AIエージェント提携」のニュースが飛び交うことになるだろう。それらは基本的に、ユーザーニーズの大きさがもたらす動きとなるが、ベンダー側としては新たな勢力争いの構図が出来上がるのではないか。
そうした中で、ServiceNowがデジタルワークフローによるプラットフォームの優位性を存分に生かせるかどうか、それをユーザーにどう訴求していくかどうか、注目していきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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