HackerRankのレポートによると、2024年における企業の採用活動は、シニア開発人材に焦点を当てて行われた。これはシニア人材の役割に対する期待が高まっているためだ。
開発者向けプラットフォームを提供するHackerRankが2025年3月27日(現地時間)に発表したレポートによると(注1)、企業がコーディング支援AIを導入すると、開発者に成果を求める風潮が高まっているという。同社は102カ国以上の1万3000人超の開発者を対象に調査を実施した。
調査対象者の3分の2以上が「AIツールの導入でプロジェクトの納期短縮へのプレッシャーが高まった」と回答した。レポートによるとコードのおよそ3分の1がAIによって生成されているという。
本レポートでは2024年における開発リーダー層の採用が前年比で22%増加し、エントリーレベルの開発者の採用増加率である7%を大きく上回ったことも強調されている。シニア開発者の採用も19%増加した。
企業の経営者たちは生成AIが従業員の生産性を大きく向上させると期待している。しかし、CIO(最高情報責任者)たちは成功を目指す過程で実証実験の失敗や人材不足、ITの近代化が進んでいないことに苦戦している。
こうした障壁があるにもかかわらず、企業は成功の可能性が高いとして、ソフトウェア開発向けの生成AIツールへの投資を進めている(注2)。2025年2月には大手小売企業であるWalmartがコーディング支援AIの導入を全社に拡大すると発表した(注3)。これは、初期導入の段階で開発者の作業時間を400万時間削減できたためだという。金融サービス企業であるCitigroupのジェーン・フレーザー氏(CEO)も「2024年に、3万人の開発者向けにAIを活用したコーディングツールを導入した」と述べた(注4)。
AIの導入が進む中で企業の採用動向にも変化が見られ、開発者の採用ではシニア人材が好まれる傾向がある。
HackerRankはこの変化の一因としてコーディング支援AIの影響を挙げる。雇用主の期待の高まりや、2023年に発生した開発者の採用縮小の動きを受けた慎重な採用再開などの他の要因も関係している。
HackerRankは、レポートで次のように述べた。
「これらの傾向は、将来的な開発者人材の供給に関する重要な課題を浮き彫りにしており、企業が今後の人材不足を招く体制になってしまっていないかという懸念がある」
AI人材への関心は開発者としての役割にとどまらない。求人プラットフォームを運営するDiceが2025年1月に発表したレポートによると、AIに精通したエンジニアはAIの知識を持たない同僚に比べて18%高い給与を得ており(注5)、これはAIの導入を推進できる人材に対する需要の高まりを示す一例だ。
これは人材を確保するための競争が激化していることの表れでもある。市場に存在するスキルと企業が求めるスキルとのミスマッチは今後も続くと予想されている。
コンサルティングファームであるBain & Companyのサラ・エルク氏(パートナー)は「CIO Dive」に対して次のように語った。
「広い意味でAI分野を定義した場合、2027年までに必要とされる人材のうち確保できるのは半分程度になるだろう。あらゆる業界の企業にとって、次世代のテクノロジーは持続的な競争優位性の捉え方を大きく変える可能性を秘めている、そのチャンスを生かすために企業が必要とするスキルに対する高い需要は、現在から未来まで一貫して続く」
(注1)2025 Developer Skills Report(HackerRank)
(注2)What GitHub’s Copilot tool reveals about AI’s future in software development(CIO Dive)
(注3)Walmart doubles down on AI with broader rollout of coding tools(CIO Dive)
(注4)Citi deploys AI coding tools to 30K developers in modernization push(CIO Dive)
(注5)Tech salaries barely inched up in 2024(CIO Dive)
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