老舗部品メーカーがクラウドで脱レガシー 移行工数を3分の1に抑えた方法

ジェイテクトギヤシステムは部門ごとにシステムを最適化して運用を続けた結果、データの分散、属人的、柔軟性の制約などさまざまな課題を抱えていた。業務プロセスの最適化と効率化を目指し、同社はどのような選択をしたのか。

» 2025年06月13日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 ジェイテクトギヤシステムは1958年創業の自動車部品メーカーで、自動車に不可欠な「ハイポイドギヤ歯切盤」を国産化した実績を持つ。現在はデファレンシャルギヤや円筒系ギヤをはじめとした部品や工作機械を提供している。

 同社では長年の事業展開の中で部門ごとにシステムを最適化して運用を続けてきた結果、全社的なデータの統合が進まなかった。この構造により、情報管理の工数がかさみ、リアルタイムな経営判断が困難になるなどの課題が生じていた。属人的な作業も多く、業務の柔軟性にも制約があった。

 運用の効率化や将来的なコスト圧縮を目指すにはクラウドを活用したいところだが、複雑化したレガシーシステムの整理や最適化には膨大なコストと工数がかかる。業務プロセスの最適化と効率化を目指し、同社はどのような選択をしたのか。

移行工数3分の1 自前での業務プロセス改革も視野に

 SAPジャパン(以下、SAP)は2025年6月11日、ジェイテクトギヤシステムがSaaS型ERPの「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を採用したと発表した。プロジェクトは2025年3月よりスタートし、フリーダムがSAPシステムの導入準備を含む上流コンサルティングおよびシステム構築を担当した。

 ジェイテクトギヤシステムは全社的な業務プロセスの最適化と効率化を理由にSAP S/4HANA Cloud Public Editionの導入を決定した。同社の出原泰裕氏(取締役経営企画統括部長)は、カスタマイズを抑えるために「Fit to Standard」手法を採用し、クラウドの特性を生かした効率的な運用を図る方針だ。出原氏は次のように述べた。

 「ERPに搭載されているベストプラクティスに既存業務を適合させることでカスタマイズを最小限に抑えるFit to Standard手法を採用しました。運用工数の削減や最新アップグレードへの迅速な対応などクラウドの利点を最大化し、持続可能性の高いビジネスプロセスの全体最適化を目指しています」

 導入支援を担ったフリーダムは、業務改革を支援するために独自のオンライン学習システムを提供した。この仕組みにより、一般的なSAP導入プロジェクトに比べてシステム構築フェーズにかかる期間を2分の1から3分の1期間に短縮できたという。

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