ある調査によると、2025年4月にIT業界の失業率は約0.5ポイント上昇し、2024年6月以来の高水準になったという。「食うに困らない」イメージが強いIT業界がなぜ雇用を控えるのか。
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国際的なIT系非営利団体であるCompTIAが2025年5月2日(現地時間、以下同)に発表したレポートによると(注1)、2025年4月におけるIT業界全体の雇用者数が21万4000人減少した。
2025年4月、IT業界の失業率は約0.5ポイント上昇して3.5%となり、これは2024年6月以来の高水準となる。一方で全米の失業率はわずかに低下して4%となり、2025年3月には米テック業界の雇用が約7000人分減少した。日本よりも失業率が慢性的に高い傾向にある米国で失業率が4%を下回ることは珍しいため、4%はかなり低い数字だといえる。
多くの企業がAIの導入に取り組んでいるが、今回の雇用抑制は「人がAIに仕事を奪われている」こととは関係がないようだ。では、なぜIT業界は雇用を控えているのだろうか。
CompTIAのティム・ハーバート氏(チーフリサーチオフィサー)は、同社の報告書で次のように述べた。「2025年4月におけるデータは良くなかったが、想定内だ。企業によるテック系求人は引き続き堅調であり、各社が状況を見極め次第、採用が再開される可能性があることを示している」
トランプ政権による関税政策の影響や消費者需要の減退への懸念が2025年4月まで続いたことを受けて、多くの企業は雇用計画やプロジェクトを様子見している(注2)。
調査企業のIDCは、2025年4月に発表したリサーチノートで次のように述べた(注3)。「景気後退と失業率上昇という現実がIT支出を直撃するだろう。企業は、デバイスやオンプレミスのITインフラへの支出を削減し、迅速なコスト削減によって収益を守ろうとするはずだ。人員削減は、IT支出の特定領域に直接影響が及ぶだろう」
ITベンダー各社は、今後の業績に対する関税の影響を指摘し始めている。IBMのアービンド・クリシュナ氏(会長兼社長兼CEO)は、同社の2025年第1四半期の決算発表時に(注4)、コンサルティングサービスの購入に関して「顧客が裁量的な支出を控える可能性がある」と警告した。
「マクロ経済環境が悪化した場合、当社のポートフォリオの中には、より変動が大きくなる可能性のある分野も存在している」(クリシュナ氏)
オンライン学習プラットフォームを提供するUdemyのミーシャ・フィッシャー氏(エコノミスト)は「一部の労働市場では堅調な動きが見られるものの、慎重な採用や投資計画が求職者にも影響を与え始めている」と述べた。
フィッシャー氏は、2025年5月2日に「CIO Dive」に送信した電子メールで次のように述べた。
「企業が新規採用に関する投資に慎重な姿勢を維持しているため、仕事を見つけるのが難しくなっている。同時に、2025年後半に成長が戻った場合、競争力が損われることを避けたいと考える企業が多いため、大規模なレイオフはまだ発生していない」
CompTIAによると、採用意欲が低下しているにもかかわらず、AI関連の職務やAIスキルに対する需要は底堅く推移している。2025年4月には新たに5万5000件以上のAI関連の求人情報が追加され、前年比184%増となった。
(注1)Turmoil weighs on tech jobs market, CompTIA reporting confirms(CompTIA)
(注2)Employers in ‘wait-and-see mode’ as tech jobs decline(CIO Dive)
(注3)The Impact of April 2 Tariffs on IT Spending(IDC)
(注4)IBM touts software segment gains as infrastructure revenue falls(CIO Dive)
(初出)Economic uncertainty roils tech labor market as IT unemployment spikes
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