話題のAIエージェント。中でも個人に帯同する「パーソナルエージェント」の存在が注目されている。その提供元の一つになり得るZoomの取り組みとともに、最新の動きを踏まえてパーソナルエージェントの行方や、これからAIが担う役割について考察する。
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これまで人間が実施してきた作業を自律的にこなすAIエージェント。さまざまな業務を担当するAIエージェントと連携して「窓口役」を果たし、個人に帯同する「パーソナルエージェント」の存在が注目されるようになってきた。
その提供元の一つになり得るのがビデオ会議ツール「Zoom」を手掛けるZoom Communications(以下、Zoom)だ。同社の日本法人ZVC JAPANが、2025年7月17日に都内で開催したプライベートイベント「Zoom Experience Day Summer」をパーソナルエージェントの行方を探ろうと取材した。
本稿では同イベントのキーノートでZVC JAPANの下垣典弘氏(代表取締役会長兼社長)および深海健一氏(グローバルアーキテクツ テクニカルセールスアーキテクト)から得たヒントとともに、パーソナルエージェントをめぐる最新の動きを踏まえて筆者なりに考察したい。
まずは、同イベントのキーノートから興味深いポイントをピックアップしておこう。
下垣氏は「汎用(はんよう)技術による変革」として、その変遷について次のように述べた(図1)。
「蒸気機関や電気、コンピューターやインターネットが世の中に大きな影響をもたらしたのはなぜか。それはこれらの技術がいつの間にか私たちの身近なところで欠かせないものになったからだ。AIもそれと同じ技術になる」
また、働き方の観点から捉えたDX(デジタルトランスフォーメーション)の変遷として、次のように説明した(図2)。
「1990年代にはオフィスにPCがどんどん入っていった。その後、モバイル機器によって人と人のつながりが密接になっていった。しかし、2020年からのパンデミック(世界的な感染症の大流行)によってテレワークが欠かせなくなり、ZoomによるコミュニケーションをはじめオフィスワークのDX(デジタルトランスフォーメーション)によってクラウド化が進み、今ではハイブリッドワークが定着した。そして、これからはAIエージェントが私たちのコミュニケーションや業務を支援してくれるようになる」
産業革命の変遷(図1)やDXの変遷(図2)について聞いたことがある読者もいるだろうが、いずれもAIの根本的な捉え方としてしっかりと認識しておきたいところだ。筆者は特にDXの変遷について改めて聞いて、AI時代が到来する前にパンデミックが起きたのは必然だったのではないかとさえ感じた。
下垣氏はその上で、「当社はもはやZoomによるビデオ会議ツールだけのベンダーではない。人と人のつながりを支えるAIファーストのワークプラットフォームを提供している。テクノロジーを理解しなくとも、どんな関係でも、あらゆるコミュニケーション手段によって、自然な人と人のつながりを実現するためにAIをフル活用していく」(図3)というビジョンを示した。
「人と人のつながりを支える」との考え方が、パーソナルエージェントにも通底するのではないだろうか。下垣氏の話を聞いて、そう感じた。
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