なぜ“様子見は禁物”か? IBMの戦略から探る「ユーザー企業はAIエージェントをどう採用すべきか」Weekly Memo(1/2 ページ)

企業がAIエージェントによって業務全体で効果を出すために、導入形態をどう考え、どんなソリューションを採用すればよいのか。IBMのAIエージェントに関する会見から考察する。

» 2025年05月26日 12時30分 公開
[松岡 功ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 ITベンダー各社が、業務の生産性を大きく向上させる可能性がある「AIエージェント」をソリューションとして次々と提供を開始している。ユーザー企業が業務全体で効果を出すために、導入形態をどう考え、どんなソリューションを採用すればよいのか――。

 日本IBMが2025年5月20日に開いた記者会見で、IBMが同年5月上旬に米国ボストンで開催した年次イベント「Think 2025」での発表内容について説明したエッセンスを紹介し、上記の疑問について考察したい。

人が主体の「+AI」から、AI主導の業務に再構築する「AI+」へ

 会見では、二上哲也氏(IBMフェロー執行役員 コンサルティング事業本部 CTO《最高技術責任者》)、鳥井 卓氏(コンサルティング事業本部 AIエージェント事業部長)、田中 孝氏(テクノロジー事業本部 Data and AI エバンジェリスト)が説明役を務めた。

左から、日本IBMの二上哲也氏、鳥井 卓氏、田中 孝氏(筆者撮影)

 二上氏は、「Think 2025ではAIエージェントをはじめ、企業の本番環境でのAI導入を推進するさまざまな新技術を発表した」と述べ、特にAIエージェントについては「開発・実行環境である『IBM watsonx Orchestrate』でAIエージェントの構築・運用を効率化できるソリューション」を新たに発表し、今後の方向として「人事や営業、調達などで各SaaSと連携する事前構築済みAIエージェントを提供する」ことを明示した。

 鳥井氏はAIにおけるIBMの考え方として、これまで人が主体の業務にAIを活用して効率化してきた「+AI」から、AI主導の業務に再構築して人は監督にシフトする「AI+」を新たな概念として訴求するとした(図1)。

図1 「+AI」から「AI+」へ(出典:日本IBMの会見資料)

 ただ、企業におけるAI+の業務変革に向けては、「業務がエンド・ツー・エンドで完全自動化されるというAI+の業務プロセスのイメージが湧かない」「AIの自社開発とシステムやデータ統合に費用がかかり、投資効果の観点から適応できる業務領域が限定される」「AIをゼロから作ろうとすると、設計→開発→検証→導入に時間がかかりすぎる」といった3つの課題があるという。

 そうした課題に対応するソリューションが、業界・業務別のエージェント型AIのソフトウェアアセットとAI+の標準業務プロセスを提供する「IBM Consulting Advantage for Agentic Applications」だ。これもThink 2025で発表されたものだ。このソリューションでは、自社開発したエージェント型AIのソフトウェアを100種類以上提供し、企業業務の25%の完全自動化を目指す構えだ。ちなみに、同社が言うエージェント型AIは「AIエージェント同士が連携して自律的に協調しながら目的を達成する技術」とのことだ(図2)。

図2 IBM Consulting Advantage for Agentic Applicationsの概要(日本IBMの会見資料)

 鳥井氏は業界・業務別のエージェント型AIの例として、人事(給与計算・支払業務)エージェント型AIソフトウェアの内容について紹介した(図3)。

図3 業界・業務別のエージェント型AIの例(出典:日本IBMの会見資料)

 図3は左から流れる形で、レセプションAIエージェントが作業指示を読み込んで分類し、マネージングAIエージェントがそれに基づいて作業計画を立てて指示を出す。すると、オーケストレーションAIエージェントがその指示に基づいて作業を実行し、最後に人事担当者(人間)がその成果をチェックして承認するといった具合だ。これによって、業務量を大幅に削減できるようになるという。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR