「AIエージェント・オーケストレーションプラットフォーム」を巡る主導権争いが、今後活発になってきそうな中で、この分野に本格参入を表明していないAWSはどう動くのか。クラウドインフラで最大の影響力を持つ同社の動向を探る。
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マルチベンダーのさまざまな業務アプリケーションのAIエージェントを連携し協調させて、企業や組織全体の業務の生産性向上を図る「AIエージェント・オーケストレーションプラットフォーム」を、大手の業務アプリケーションベンダーやITサービスベンダー、ハイパースケーラーなどが相次いで打ち出し、それぞれにマルチベンダーのエコシステム作りに乗り出している。
そうした中、これまでAIエージェントについては開発環境の整備に注力しているものの、オーケストレーションプラットフォームへの参入は表明してこなかったAmazon Web Services(AWS)が、2025年7月16日(米国時間)に米国ニューヨークで開催したプライベートイベント「AWS Summit New York City」において新たな発表を行った。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)がそのイベントの内容について、2025年7月22日に記者説明会を開いた。その中から今回のイベントの目玉でもあるAIエージェント関連の内容から筆者が注目した点をピックアップし、オーケストレーションプラットフォームへの参入の思惑を探ってみた。会見で説明役を務めたのは、同社の小林正人氏(サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長)である。
まずは、小林氏が今回のイベントの重要なメッセージとして説明した幾つかの中から、次の2つを紹介しよう。
1つ目は、「AIエージェントアプリケーションを支えるための基礎として、動的かつ自律的なAIエージェントを本番稼働させるための新しいツールと仕組みを提供する」ことを発表したことだ。
小林氏はAIエージェントの開発における課題として、「AIエージェントアプリケーションを開発しスケールするために必要な要素は多数あるが、十分に整備されているとはいえない」と指摘。具体的に、「セキュアで拡張性を備えた実行環境」「過去のやりとりを記憶し、学ぶ力」「エージェント、ツール、データへの適切なアクセス権限」「必要なアクションと取るためのツールユース」「タスクを遂行するためのツールの探索性と接続性」「オブザーバビリティと監査可能性」といった点を挙げ、「これらの課題に対し、AWSはお客さまが競争力につながるイノベーションに注力していただくためのサービスを提供する」として、AIエージェントを支える基礎となる「Amazon Bedrock AgentCore」などを紹介した。(図1)
2つ目は、「AIエージェントの活領域として大きな注目を集めるソフトウェア開発では、これまでにない変革と新たな開発体験を提供するイノベーションが現実になりつつある」として、「Agentic AI(以下、エージェント型AI)がソフトウェア開発を再定義する」と強調したことだ。(図2)
小林氏は、「新しいテクノロジーの力を最大化するには、既存の仕組みに落とし込むのではなく、『最も良い体験はどういうものか』を柔軟に考えるところから始まる」という発想の転換が求められると強調。その発想の下で、AWSは今回、エージェント型の統合開発環境(IDE)として「Kiro」を発表した。これは、「デザインベストプラクティスにのっとって自然言語で仕様を作成し、タスクに落とし込んだ上でコードを生成。本番環境での利用までをカバーする」ものである。
以上の2つのメッセージの中で、今回のイベントでサービスとしての大きな発表は、1つ目で紹介したAmazon Bedrock AgentCoreと、2つ目で紹介したKiroといえよう。
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