小売業界は生成AIでどう変わるか。Amazon.comを支えてきたAWSの取り組みから、生成AIが顧客体験に与えた影響と今後の可能性を探る。AWSが提唱する、小売業を成功に導く「向上の3ステップ」についても考察する。
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生成AIは今やあらゆる産業に影響をもたらしつつある。中でも小売業界では、CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)における競争力の新たな源泉となりそうだ。こうした中で、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が生成AIとクラウドにフォーカスして小売業界向けビジネスについて記者説明会を開いた。同社の取り組みから「小売業界は生成AIでどう変わるか」を考察する。
「AWSは小売業から生まれた、小売業のためのクラウドだ」
AWSジャパンの五十嵐 建平氏( エンタープライズ技術本部 流通小売・消費財グループ本部長)は、同社が2025年2月18日に開いた記者説明会でこう強調した。
五十嵐氏がこう言うのは、親会社であるAmazon.com(以下、Amazon)のIT基盤を長年にわたって支えてきた背景があるからだ。「AmazonのIT基盤の技術を小売業の皆さまに還元していきたいという思いがある。既にスタートアップからエンタープライズまで多くのお客さまが利用している」と胸を張った(図1)。
同氏によるとAWSは現在、240を超えるクラウドサービスでワークロードをサポートしている。生成AIについては「基盤モデルのトレーニングと推論のためのインフラストラクチャ」「大規模言語モデル・基盤モデルを組み込んだアプリ開発のためのツール」「大規模言語モデル・基盤モデルを活用した構築済みアプリケーション」といった3層構造から構成されるソリューションを提供し、多様なユーザーニーズに対応すべく選択肢を用意している(図2)。
生成AIとクラウドが小売業界に最もインパクトをもたらす領域について、五十嵐氏は次のように述べた。
「皆さんが小売店で買い物をする際、物を買うという行為はこれまでもこれからも変わらないだろうが、小売店における体験はさまざまな形で変わってきている。CXが生成AIとクラウドによって、これからドラスティックに変わる転換期が今まさに訪れていると考えている。AWSはAmazonを支えてきた知見から、お客さまごとに最適なCXを提供したい」
同氏は、キーワードとした「CX」の主な要素として、「マーケティング」「購買体験」「アフターフロー、カスタマーサービス」の3つを挙げて、その理由を次のように述べた。
同社は今回の会見で小売業界向けソリューションの新たな取り組みを幾つか挙げたが、その中から筆者が着目した内容を1つ紹介しておこう。それは、「生成AIによるプロダクトイノベーション」だ。
五十嵐氏によると、「独自の商品を展開する製造小売業者において商品のリサーチとデザインに生成AIを活用すれば、コスト削減やスピードアップを図れるとともに商品価値としてのイノベーションを起こせる可能性がある」とのことだ。このソリューションはAWSのパートナー企業であるLeonardo.AIとともにAWSのサービスによって提供されている(図3)。
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