生成AIを「クラウドで活用する際」の3つの勘所――AWSパートナーイベントから考察Weekly Memo(1/2 ページ)

AWSがパートナー施策で生成AIに関する取り組みに注力している。その内容からユーザー視点で重要な「生成AIをクラウドで活用する際のポイント」を考察したい。

» 2024年03月18日 14時35分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 「今、大いに注目されている生成AIについて、AWSはパートナー企業と緊密に連携して、お客さまが取り組むイノベーションを強力に支援したい」

 Amazon Web Services(AWS)の日本法人アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)の渡邉宗行氏(執行役員 パートナーアライアンス事業統括本部長)は、同社が2024年3月15日に都内ホテルで開催したパートナー企業向けの年次イベント「AWS Partner Summit Tokyo 2024」の基調講演でこう切り出した。

AWSジャパンの渡邉宗行氏(執行役員 パートナーアライアンス事業統括本部長)

 同イベントは、AWSがパートナー施策において注力する取り組みについて説明し、パートナー企業の理解と協力を得るのが狙いだが、その内容はユーザー視点でも気付きにつながる点が数多く見受けられる。生成AIについての話が興味深かったので本稿で取り上げる。

AWSパートナーイベントでも生成AIが話題に

 渡邉氏はまず、AWSにおける生成AIの技術スタックとして、インフラとなる「基盤モデルの学習と推論のための基盤」(下段)、開発基盤となる「基盤モデルを活用してアプリケーションを構築するツール群」(中段)、アプリケーション層となる「基盤モデルを活用するアプリケーション」(上段)といった3層を整備しており、それぞれの領域でパートナー企業との連携を図っていることを説明した(図1)。

図1 AWSにおける生成AIのスタック(「AWS Partner Summit Tokyo 2024」基調講演資料)

 その上で、同氏は「AWSは全ての領域で自社のサービスだけでなく、パートナー企業のテクノロジーやサービスと組み合わせることによって幅広いソリューションをお客さまに提供していく」と、パートナー施策の姿勢を強調した。

 AWSが提供する生成AIサービスの中で注目されているのが、上記のスタックで中段に位置する「Amazon Bedrock」だ。これは「用途に合わせて最適な基盤モデルを選んで利用できる」(渡邉氏)サービスで、図2に示す基盤モデルを使うことができる。

図2 Amazon Bedrockで利用できる基盤モデル(「AWS Partner Summit Tokyo 2024」基調講演資料)

 Amazon Bedrockは日本でも2023年10月から提供されており、パートナー企業によってこれらの基盤モデルを活用したソリューションの開発が進んでいる。その取り組みにおいて、渡邉氏は「パートナー企業とは4つのカテゴリーで連携協力できると考えている」と話し、次のように説明した。なお、この説明では「生成AI」と「基盤モデル」を同義語として捉えていただきたい。

  1. インテグレーション: 「お客さまが生成AIを使ってやりたいことをトータルシステムの中に実装する」(渡邉氏)
  2. テクノロジー: 「パートナー企業が持つテクノロジーを生成AIに組み込んでいく」(同)
  3. 開発効率の向上: 「パートナー企業での開発作業において生成AIを使うことによって開発コストを削減する」(同)
  4. 内製化の支援: 「生成AIは内製化のツールとしても今後広がるだろう。本当に効果を出すためには、やはりパートナー企業がお客さまに“伴走”する必要があるとAWSでは考えている」(同)

 この4つのカテゴリーを踏まえた上で、渡邉氏はパートナー企業による生成AIのユーザー事例として、6つのケースを紹介した(図3)。

図3 パートナー企業による生成AIのユーザー事例(「AWS Partner Summit Tokyo 2024」基調講演資料)

 さらに、AWSはソリューション分野別のスキルや導入実績によるパートナー認定プログラム「AWSコンピテンシー」の新たなソリューション分野として、「AWS Generative AIコンピテンシー」を2024年3月6日(現地時間)に発表した。ユーザーに対して生成AIの専門知識を持つパートナー企業を分かりやすく見せるのが狙いだ。

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