AWSはAIエージェント事業をどう展開するのか? パートナー戦略から探るWeekly Memo(1/2 ページ)

いまだAIエージェントについて目立つ発信をしていないAWS。AWSはどのような展開を考えているのか。AIエージェントが今後、企業の業務システムにどのように適用されるのかと併せて考察する。

» 2025年05月12日 14時45分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 ITベンダーがこぞって注力している「AIエージェント」事業に対し、Amazon Web Services(AWS)はどのような展開を考えているのか。クラウド基盤サービス市場をリードし、その立ち位置を生かしながら生成AI事業にも積極的に取り組む同社。しかし、AIエージェントについては目立った発信がなかった。

 AWSの日本法人アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)が2025年5月8日に都内で開催した2025年のパートナー戦略についての記者説明会で、筆者はAIエージェントの取り組みについて尋ねた。

 今回はAWSのAIエージェントに関する取り組みを紹介するとともに、AIエージェントが企業の業務システムにどのように適用されるかについて考察する。

9つの基盤モデルが選べる「Amazon Bedrock」

 あらかじめお断りすると、AWSのパートナー戦略の会見で筆者がAIエージェント事業について質問したのは、日本ではITエンジニアの多く(AWSの調査によると76%)がITベンダーに所属していることから、AWSとしてはパートナー(ITベンダー)経由でのビジネスが主体になっているからだ。それはAIエージェント事業についても同じというのが、筆者の見方である。

 AWSジャパンの渡邉宗行氏(常務執行役員 パートナーアライアンス事業統括本部 事業統括本部長)は会見で、日本でのパートナー戦略における注力領域として「生成AI」「マイグレーション・モダナイゼーション」「AWS Marketplace」「人材育成」の4つを挙げ、生成AIの取り組みについて以下のように説明した。

AWSジャパンの渡邉宗行氏(筆者撮影)

 まず、生成AIスタックは3つの層で構成されている(図1)。

図1 AWSの生成AIスタック(出典:AWSジャパンの会見資料)

 下の層は「AIモデルを構築・学習させるためのインフラストラクチャ」で、マネージドインフラの「Amazon SageMaker AI」やコンピュートリソースの「AWS Trainium」「AWS Inferentia」などがある。

 中央の層は「生成AIアプリケーションを構築するための基盤モデルやツール」で、さまざまな基盤モデルを用意したマネージドサービス「Amazon Bedrock」を提供している。

 上の層は「生産性を向上させるアプリケーション」で、ビジネスを支援する「Amazon Q Business」と開発を支援する「Amazon Q Developer」を提供している。

 この中で、中央の層のAmazon Bedrockでは、9つの基盤モデルをマネージドサービスとして同一のAPIによって提供している(図2)。

図2 Amazon Bedrockの基盤モデル(出典:AWSジャパンの会見資料)

 渡邉氏によると、およそ1年半前の提供開始時における基盤モデルの数は5つだった。こうした提供形態について同氏は、「AWSではお客さまが生成AIを活用する際に、必要な基盤モデルを複数組み合わせて使う形になると見ている。基盤モデルもそれぞれ特性があるものを数多く用意した方が、お客さまの選択肢の幅が広がる」と説明した。同社はAmazon Bedrockについてこれまでも説明してきたが、選択できる基盤モデルが9つになったことで、このサービスそのものの特性が一段と引き立つ形になった。

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