大手企業を中心に進むオフィス回帰 テレワーク継続を阻む見えない壁とは

コロナ禍を経てテレワークは世界的に普及したが、近年はオフィス回帰を強く打ち出す企業が増えている。テレワーク継続希望が82.2%と高水準な中、オフィス回帰が進む理由とは。

» 2025年08月29日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 コロナ禍を経てテレワークは世界的に普及した。しかし、近年は米国の大手IT企業のAmazonやGoogleなどがオフィス回帰を強く打ち出し、オフィス勤務を基本とするハイブリッドワークへと舵を切っている。

 調査によると日本企業でも同様の動きが見られ、特に大手企業は「出社を原則とする」方針へと回帰しているという。テレワーク継続希望が82.2%と高水準な中、オフィス回帰が進む理由とは。

テレワーク継続を阻む見えない壁

 パーソル総合研究所は2025年8月27日、「第十回・テレワークに関する調査」の結果を公表した。今回の調査は2025年7月に全国の就業者を対象として実施したもので、テレワークの実施状況や意識の変化を定量的に把握することを目的としている。

 調査結果によれば、正規雇用社員におけるテレワーク実施率は22.5%となり、前年とほぼ同水準で推移した。コロナ禍以降に浸透したテレワークは安定的に定着しているが、実施頻度については減少傾向だ。特に「週1日未満」や「週1日程度」といった低頻度の層が増加しており、週1日以下でテレワークを実施する従業員の割合は49.4%に達した。前年の43.6%から上昇しており、「頻度が減った」と回答した人は35.8%であった。

 企業規模別では従業員数1万人以上の大手企業における実施率が前年から3.6ポイント減少した。テレワーク実施の企業方針については62.2%が「会社から特に指示は無い」と回答しているが、「原則出社」とする方針を示す企業がやや増加しており、大手企業を中心にその傾向が見られた。

企業規模別テレワーク実施率(出典:パーソル総合研究所のプレスリリース)

 業種別に見ると、情報通信業が56.3%で引き続き最上位となったが、「宿泊業、飲食サービス業」では低下が見られた。地域別では関東圏が31.7%で高い数値を示した。職種別では「コンサルタント」「IT系技術職」で実施率および頻度が高く、週1.8回を超えている。反対に、「Webクリエイティブ職」「広報・宣伝・編集」「営業推進・営業企画」「資材・購買」は過去2年で減少傾向が顕著となった。

 雇用形態別に見ると、「パート・アルバイト」の実施率が11.1%と低水準だ。前年と比べると「公務員」「派遣社員」が微減、「契約・嘱託社員」「パート・アルバイト」は微増している。

 テレワークを実施しない理由については、「制度が整備されていない」が年々上昇しており、「業務がテレワークに適さない」を逆転した。制度面での未整備が依然として大きな障壁となっていることが示されている。

 就業者の意識面ではテレワーク継続希望が82.2%となり、調査開始以来で最高値を記録し、2020年以降高水準が続いている。困りごととしては「運動不足」が多いものの全体的には減少傾向にある。一方で、「部下の様子が分からない」という上司層の回答だけが増加しており、マネジメント上の課題は依然として残っている。不安感に関しては「相手の気持ちが分かりにくい」が最多であった。

 パーソル総合研究所は、本調査を通じて日本のテレワークが安定した定着段階に移行したことを確認したと述べている。ただし頻度の減少傾向やマネジメントの課題が依然として解消されていない点を指摘している。今後、人材確保の難しさが深まる中で、従業員が望む柔軟な働き方と管理職層が抱える不安との間に存在する溝をどう解決するかが課題となるとした。テクノロジーの導入やコミュニケーション施策などに工夫の余地があるとの見解を示している。

 今回の調査は、全国の20〜59歳の就業者を対象にインターネット調査方式で行われ、正規雇用2万6352人、非正規雇用3883人、公務員・団体職員496人の合計3万731人から回答を得た。分析にあたっては過去調査との比較が可能となるよう正規雇用を中心に数値を算出している。

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