GENIAC発の基盤AIモデル「SG4D10B」が創薬ベンチマークで首位獲得 製薬の効率化へ貢献AIニュースピックアップ

NEDOとSyntheticGestaltが開発した「SG4D10B」は、4D技術と100億件の化合物データを活用し創薬ベンチマークで世界首位を獲得。小型版公開や企業連携を進め、国際展開と次世代モデル開発で幅広い分野の研究効率化に寄与する。

» 2025年08月29日 08時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とSyntheticGestaltは2025年8月22日、生成AI開発力強化プロジェクト「GENIAC」において、世界最大規模の分子特化型基盤AIモデル「SG4D10B」を開発したと発表した。同モデルは創薬ベンチマークの3つの指標において世界首位の性能を達成し、製薬分野を中心に幅広い応用の可能性が期待される。

製薬業界が直面してきた課題と新技術の突破口

 製薬業界では、新薬の探索や新素材の開発に膨大な時間と費用が必要とされてきた。分子構造の多様性と複雑性により、従来のAIモデルは十分な予測精度を実現できていなかった。今回の成果はこうした課題に転換点をもたらすものとなる。

 SG4D10Bは革新的な4D技術を採用し、分子が持つ立体的かつ動的な構造を高精度に表現できる点が特徴だ。世界的な化合物サプライヤーとの共同研究を通じ、100億件にのぼる膨大な化合物データを学習に使った。その結果、毒性や透過性、安定性などの基準において従来モデルを上回る成果を収めた。

 小型版の「SG4D100M」は「Google Cloud Marketplace」や「AWS Marketplace」で公開され、研究者や企業が容易に試用できる環境が整っている。実験データで得られた数千件規模の化合物活性情報を公開することで、オープンサイエンスの推進にも貢献している。日本国内の製薬企業との共同利用も進展しており、既に複数の導入事例が確認されている。

 同研究への国際的評価も高まっている。2025年3月に米国サンノゼで開催された「NVIDIA GTC 2025」で同研究の成果が報告され、同モデルが創薬分野における新たな標準技術となり得ることが示唆された。

 NEDOとSyntheticGestaltは今後、GENIACで得られた成果を基盤として、国際市場での展開を拡大し、次世代モデルの開発を継続する方針だ。化粧品や農薬、新素材など多様な分野で実験コストの削減や効率化を支援し、持続的な研究開発の進展に寄与することが見込まれる。

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