Cisco好調の理由は? 実はすでに始まっていた「ITインフラ大変革期」CIO Dive

Ciscoの直近四半期の売上高は前年比で8%増、エンタープライズ事業は5%増と好調に成長しており、今後は「大規模刷新サイクル」によってさらなる拡大を見込んでいるという。なぜ今企業はネットワークに投資しようとしているのか。

» 2025年10月06日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 今、多くの企業がネットワークの刷新に資金を投入しようとしている。

 2025年8月13日(現地時間、以下同)に開催されたハードウェアベンダーであるCisco Systems(以下、Cisco)の2025年第4四半期の決算説明会で(注1)、同社の幹部は「ルーターの刷新に関する需要がエンタープライズ事業の拡大を後押しすると見込んでいる」と語った。

 Ciscoは、2025年7月26日までの3カ月間でエンタープライズ向け製品の受注が前年比で5%増加し、売上高全体は前年比で8%増加した。さらに同社はルーターの新製品投入によって「複数年におよぶ大規模刷新のサイクル」が始まるとしている。この強気の背景に何があるのか。

ネットワークの「大規模刷新サイクル」が起こる背景

 Ciscoのチャック・ロビンスCEOは2025年6月にCiscoが発表したレポートを引用し(注2)、「97%の企業がAIを導入する要としてネットワークのモダナイズを重視している」と示した。

 「AIエージェントへの移行に伴い、推論処理の需要が企業やエンドユーザーのネットワーク環境に広がる。それにつれて、ネットワークのトラフィックは前例のない水準に達するだろう」(ロビンス氏)

 Ciscoはネットワーク機器をAI対応に刷新し(注3)、2025年6月に強化版ルーター「8000シリーズ」を発表した(注4)。同社の「ISR4200シリーズ」や「ISR4300シリーズ」、「ISR4400シリーズ」の一部のプラットフォームルーターへの脆弱性対応以外のソフトウェアメンテナンスは同年8月に終了する(注5)。(注5)。ロビンス氏は「新たなスイッチの投入は、複数年におよぶ大規模刷新のサイクルの始まりだ」と述べた。

 Ciscoは生成AIによって引き起こされたITインフラの大変革の恩恵を受け始めている。膨大な計算能力を必要とする生成AIへの巨額投資の大部分は、大規模ワークロードを処理するためのハードウェアに振り向けられている。

 調査企業であるGartnerによると(注6)、2024年のデータセンターへの世界的な支出は前年比40%増の3330億ドルに急増した。同社は2025年も同様のペースで成長が続き、市場規模は4750億ドル近くに達すると予測している。

 インフラ投資の大半はクラウドのキャパシティ拡張に充てられているものの(注7)、企業はハードウェアのアップグレードにも注目している。ITインフラサービス企業であるKyndrylが2025年5月に公表したレポートによると(注8)、CEOの4割以上が「自社の技術インフラはAIを活用するには不十分だ」と考えている。一方で、テクノロジー部門の経営幹部は楽観的で、同様の認識を示したのは約20%にとどまった。

 2025年、ハイパースケーラー各社がデータセンターの設備投資に数千億ドル規模を投資すると改めて表明する中で(注9)、Ciscoの直近四半期の売上高は前年比で8%増加し、147億ドルに達した。AIインフラに関連する受注は8億ドルを超え、通期では20億ドル以上に達した。

 ロビンス氏によると、エンタープライズ向けの受注と、それに関連する収益がまさに増加し始めた段階だという。「直近10年の技術の移り変わりを見てきたが、こうした変化はクラウド事業者から始まり、その後に企業へと広がるのが常だ」(ロビンス氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR